先日開催した「浜松・夢双庵」のオープンハウス。
台風12号の接近による影響が心配されましたが、さほどの影響はなく無事に終了しました。
完全予約制ということで、来場いただいた皆様は時間の許す限り、じっくりとご覧いただきました。
当日限定で、地元の家具屋さん(無垢材専門のデザイン家具を取り扱っている)が置き家具を
展示していただいたので、リアルな暮らしぶりが伝わったように思います。
2階リビングの先にはダイニングがちらっと見えていて、空間が繋がっているのが分かります。
窓の内側にはカーテンやブラインド・スクリーンではなく、障子をセットしました。
その理由は、和風に仕立てたいというよりも、自然光の拡散による明るさと断熱性能の向上や
和紙による調湿効果を図りたかったことによります。
窓の内障子を開けた状態で、リビングからダイニングを見たところです。
障子を開けただけで、リビングとダイニングの関係がぐっと近づきますね。
右手正面のローボードの上にはTVが置かれ、左手方向には屋根付きのバルコニーが広がります。
家具を置くだけで、楽しんだり、寛いだりする光景が、目に浮かぶようです。
ダイニングから正面のバルコニー、左奥のリビングを見たところです。
全ての窓が壁の中に仕舞えるので、開口部が美しく見えます。
それによって外界が近づき、内と外の境界が曖昧になるような不思議な感覚を味わえるのです。
来場された皆さまは、ここのテーブルで景色を眺めながら居心地が良いのか、長居をしていました。
ダイニングから左奥のキッチンと右奥のリビングを見たところです。
それぞれの空間がどう繋がっているのか、お分かりいただけるかと思います。
よく見ると、天井の構成や仕上げが異なっています。
そこに立っているのか?それとも座っているのか?だったり、そこで作業をしているのか?
それとも寛いでいるのか?の違いを定め、それぞれの天井を慎重にデザインしていきます。
キッチンからダイニングを見たところです。
アイランドキッチンと右側の背面収納家具は、木質感を基調にしたデザインで取り纏めました。
左側の壁は大谷石、右側の壁は手作り感が残るタイルを貼っています。
キッチンの前方にダイニングテーブル、その先にはフルオープンの窓が広がります。
内障子を閉めると、三方が囲われ、アルコーブ感が強くなります。
板貼りによる勾配天井と、床・障子の桟・天井の全てを縦のラインにすることで、より求心力が
高まり、自然にここへと足を運んで食事をしたい気持ちになることでしょう。
住まい手の要望をお聞きし、その家族にあった生活が送れることを少しでもサポートするのが、
建築に携わるプロとしての役割です。
そして、住まい手にとって使いやすかったり、丈夫に造ったり、省エネを追及したりするのが、
建築設計者としての役割でもあります。
さらに、住まい手が期待されていた以上の居心地の良さだったり、緻密に計算された無駄のない
空間だったり、手足が触れる箇所へのさりげない配慮だったり、質感を損ねないようにコストを
コントロールしたり、遊び心をくすぐるようなデザインだったりを一生懸命考えて提供するのが、
私たち建築家の責務なのです。
今でも、数十年前に設計をした住まい手からメンテナンスの相談を受けることがあります。
家は住み始めてから真価が問われますので、長いお付き合いが出来るよう考えたいものです。