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by mura-toku
| 2010-07-09 16:08
| 建築
前回ご紹介した、JIAの建築ウォッチングで次に訪れたのは、建築家吉田五十八設計による
岸信介邸 (現在は旧岸邸となっている)。
第56・57代の内閣総理大臣を務めた岸氏の自邸です。
御殿場市東山の広大な敷地に建てられたこの邸宅は、1969年(昭和44年)に竣工していて
最近は一般公開されているとのこと。
まさに邸宅という名に相応しい、前庭と車の寄付きを備えたアプローチをご覧下さい。
170坪を超える延床面積なのですが、訪問者に対して決して威圧感を与えない屋根の掛け方
は、見事の一言に尽きます。
家全体がきりっとした緊張感に包まれているのは、この仕事に相当なエネルギーを投入したで
あろう設計者と施工者の苦心の跡といってもいいでしょう。
まるで巨大な日本画がそこにあるかのように錯覚してしまう、ダイニングルームの開口部。
日本建築の特徴のひとつである、室の内と外を融合させてしまう典型例です。
思わず外の庭へ足を運んでしまう私たちを見て、吉田氏はきっとほくそ笑んでいるのでしょうね。
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by mura-toku
| 2010-06-25 17:51
| 建築
梅雨入り直前の先週末に、御殿場にある〝とらや工房〟を見てきました。
設計者は、 『素形』 を追求されている内藤廣さんです。
今春から入会した、社団法人日本建築家協会(通称JIA)東海支部静岡地域会で企画された
建築ウォッチングという見学会に参加し、多くの仲間と建築談義に浸りました。
今年度で早くも2回目の企画は、どの建築も見ごたえがあり、久しぶりに建築の充電ができた
ように思います。
場所は東名高速の御殿場ICから車で5分、東山の森に囲まれる自然豊かな環境にあります。
門をくぐり、林の中をくねくねと歩いていくと、少し開けたところに建物が見えてきます。
曲がったアプローチがそのままエントランスへと続き、気が付いたらいつの間にか店の中にいる
という心憎い演出です。
店に入った正面は全面開放で、裏庭の景色が目に飛び込んできます。
店内の落ち着いた暗さと、外界の開放的な明るさの対比は絶妙で、私の好きな空間でした。
今月のお菓子のひとつであるごま団子と煎茶は、心身ともに癒しを与えてくれていました。
日常のことから離れ、「今日は思う存分建築を楽しむぞ」 と心に決めていた私。
うきうき気分を察したのか、隣にいた会長のT氏から 『村松さん、今回の原稿をよろしくね!』
と依頼され、思わず絶句!!(そ、そんな~、それだけは勘弁してほしいな)
こちらの願いは届かず、これは新入会員の役目とのこと。(とほほ、現実は厳しい)
お気楽モードから真剣モードに切り替わった瞬間なのでした。
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by mura-toku
| 2010-06-14 17:22
| 建築
私の場合、職業柄どうしてもデスクワークが大半を占める。
自分専用の椅子に、朝から晩まで10時間以上座りっぱなしという日も珍しくない。
ひとくちに仕事いっても、図面を描くだけではなく、積算をする、書類を作る、原稿を書く、
ブログに投稿するなど様々だ。
人間誰しも得て不得手があるわけで、私はパソコンを使って長時間仕事をすることに、
とても苦痛を感じてしまうタイプなので、こうした日は朝からブルーな気分になる。
それとは逆に、一から創造していく例えばプランニングをするときは、少し心が躍るようだ。
お気に入りのCDを聴きながら、自由気ままに鉛筆を滑らせていく。
とくに当てがあるわけではないのに描いた線を重ねてみると、一筋の光が見えることがある。
1本の線が次の線へつながり、それがまた上へ下へと伸びていった時、ようやくひとつの
仮の姿が目の前に現れる。
やがて気分も高揚し、半分鼻歌混じりになってくればゴールは間近だ。
私にとって創造を膨らませてくれるもののひとつに、音楽があるのは間違いない。
人によっては、それがペンシルであったり、紙であったり、机であったりすることがあるだろう。
千差万別であることは当然なのだが、設計者としては吸い寄せられてしまうような静かな
空間をつくりたいと思う。
それは、ちゃんとした部屋である必要はない。
気がついたら、いつの間にか腰を下ろして豊かな気持ちになれる場所。
案外、コーナーであるほうが毎日足を運び、そこに家族の歴史を刻んでくれるのでは・・・。
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by mura-toku
| 2010-06-08 16:40
| 建築