静岡県浜松市にある村松篤設計事務所の所長のブログです


by mura-toku
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

 現場では、大工を始め各職方がいつも以上に細心の注意を払いながら、工事を進めています。
 というのは、もう手に入らない稀少材を用いたり、代替品が無いため失敗が許されない仕事
 をお願いしているからです。それは全て建主と建築家の拘りから、選定していったものでした。
 ただ、このような材や仕上げをやみくもに選んだわけではなく、双方が要求される機能に対して
 空間をデザインし、さらにそれを活かすために考え抜いた結果だと思っています。


 
b0111173_10115600.jpg

b0111173_10294815.jpg



 ここはプライベートルームですが、正面の壁に向かって勾配天井にしました。
 正面の窓は視線が抜けていくポジションに設けていて、勾配天井はそれを助長してくれています。
 床は針葉樹フローリング、壁は漆喰塗りを予定していますが、天井はあらかじめ白色に塗装した
 檜の無節板を目透かし貼り(板間を透かせて目地を取る貼り方)としています。
 理由は、この部屋は一定の時間だけ音が発生するため、吸音目的でこの仕上を選定しています。
 簡単な方法なら無機質の吸音板もありますが、吸放湿性のある自然素材にこだわりました。



 
b0111173_10374971.jpg


 2階のリビングから繋がる畳の間を眺めたカットです。
 屋根裏まで空間を拡張し、広がりのある吹抜にしてみました。
 勾配天井の最上部には、自然光と通風換気に役立つ電動開閉式の天窓を設けています。
 その下の壁の窪みにはエアコンがセットされ、その左側の開口はロフトへと繋がる展開です。
 これら様々な条件をクリアしようとした結果が、このデザインを生んでいったように思います。
 壁と天井は漆喰塗りで、天井には空間を引き締めるために杉柾材を水平に入れてみました。


 
b0111173_10502075.jpg


 リビングの反対側はバルコニーへ繋がる大開口(緑色の柱カバーから右手の丸柱まで)と、右奥
 のダイニングが見通せます。
 天井をあえて寄棟(傘形状にする)にしたのは、視線の抜けを強調したかったからです。
 壁・天井ともに漆喰塗りにしたことで、より空間は明るく開放的な印象になることでしょう。


 
b0111173_10593123.jpg


 リビングに隣接しているダイニングです。
 正面の大きな窓に向かって勾配天井とし、フランス産の板を貼ってみました。
 2階からの眺めへと視線が吸い込まれるように、天井の角度と高さを慎重に決めています。
 天井材の選定にあたっては床材とのマッチングを考え、色合いと柔らかさを備えたものにしました。

 このように、各空間で要求される機能がデザインを生むきっかけになっている場合があります。
 一概には言えませんが、建築にとって機能(要望、環境、住み心地)はとても大切なものなのです。

 
 

[PR]
# by mura-toku | 2018-02-16 11:27 | 建築 | Comments(0)

 今年の冬は全国的に冷え込みが厳しく、私が暮らしている静岡県浜松市でも雪こそ降らない
 ものの、氷点下の最低気温を何度も記録しました。
 太平洋岸の特長である温暖な気候に恵まれ、大雪警報が出た日でも風花が舞う程度ですので、
 雪国に暮らされている皆さまからすれば、春の陽気に感じられてしまうことでしょう。
 というわけで、真冬の浜松は連日晴天の日が続きます。


 
b0111173_14383659.jpg


 現在工事中の現場へ行き、屋根の上にあがってみました。
 この日は多少曇りがちでしたが、それでも太陽の温もりを感じる穏やかな天気でした。
 ちょうどここからは、私が30年ほど前に設計した家(右に見える黒い屋根の家:1984年竣工
 蜆塚の家)を望むことが出来ます。



 
b0111173_14481514.jpg


 「 屋根には太陽が住む 」というタイトルの通り、私が暮らしている地域はほぼ一年中、屋根に
 太陽が降り注いでいます。つまり、屋根には太陽が住み着いているようなものなのです。
 温暖な地域とはいえ、冬の夜間は気温が下がりますので、暖房装置は当然必要になりますが、
 この熱源を化石エネルギーに頼るのではなく、極力太陽エネルギーに依存しようと考えました。
 黒色のパネルは高性能の集熱板と断熱された箱がドッキングしたもので、電気を創る太陽光発電
 ではなく、高温の熱(空気)を集める太陽熱利用システムの部材です。
 1軒の住宅で畳3枚~4枚程度のパネルを載せるだけで、室温の向上を図ることが出来ます。



 
b0111173_15054683.jpg


 集熱パネルで得た高温の空気を、家の中へ送りこむための金属製BOXを入れているところです。
 屋根の下地面に穴を開け、部材を差し込みます。



b0111173_15060659.jpg


 差し込んだ後は、空気漏れと防水のためにテープをしっかりと貼り付けます。
 金属製BOXの内側には高温を保つため、銀色の高性能断熱材で覆われているのが分かります。
 ちなみにBOX内で空中に浮いている黒いバーは、温度センサーを取り付けるためのものです。



 
b0111173_15191272.jpg

 集熱パネルの設置が終わり、周りの金属製屋根が葺き終わったところを見上げてみました。
 青空に黒色の屋根が輝いて見え、パネルと屋根が一体になっているように感じました。
 高温の空気は集熱パネルだけでも集めることは出来ますが、このように南面に大きな屋根がある
 場合は、予備集熱としてパネルの手前を金属板で葺かれた方が望ましいでしょう。
 そして、この高温空気を家の中(原則として床下)に取り込むことで、快適な環境が実現します。



 
b0111173_15264540.jpg

 写真の家は、2003年に竣工した

 ですが、この家も同様の太陽熱利用システムを導入していて、1階の床下に空気を送り込むことに
 より、床暖房を図っています。
 ❝ 浜松・夢双庵 ❞ の完成予想とは異なりますが、仕切が少ない吹抜空間をつくることができます。
 つまり、家の中のどこにいても温度差の無い室内環境となり、ヒートショック(室温の低いWCや
 脱衣所・浴室で倒れること)が起きにくくなります。
 また、ひとつながりの家に暮らすことで常に家族の気配が感じられ、良好な家族関係を築いている
 ケースをこれまでいくつも見てきました。
 中には、このような家に影響をされたのか、建築やデザイン等のものづくりを目指す子どもたちも
 生まれてきています。

 家は丈夫で長持ち、格好良くて省エネが一番、といったCMをよく見掛けます。
 どれも分からないわけではありませんが、それを全て満たしたら本当にいい家になるのでしょうか?
 私はこう思います。どんなに密集地でも空を見上げて太陽が出ていれば、それを利用したいと。
 多少のイニシャルコストは掛かりますが、日溜まりのような心地良さは替え難いものがあります。
 家をつくるうえでのポインとは沢山ありますが、自分にとって何が大切かを考えてみたいものです。

 

[PR]
# by mura-toku | 2018-02-14 16:13 | 建築 | Comments(0)

 昨年竣工した ❝ 掛川市森林組合新事務所 ❞ が、ウッドデザイン賞2017を受賞しました!


 
b0111173_15421684.jpg



 この賞は、木材・木製品を利用する消費者が木の良さや価値を再発見できる製品・取組を顕彰し、
 森林・林業の活性化や木のある豊かな暮らしの実現を図る取組として、2015年度から始まりました。
 3年目となる今年度は、全国から453点の応募があり、このうち建築物は64点が選ばれました。
 私たちが受賞した部門は、ソーシャルデザイン部門(木を使って地域や社会を活性化しているもの)
 で、建築・空間・建材・部材分野(審査員分野長は建築家の隈研吾氏)になります。



 
b0111173_15582643.jpg


 こちらは、昨年の12月に東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2017」で、ウッドデザイン賞受賞
 作品が展示されたときの紹介パネルです。
 審査委員会からは「地域産の木材を美しく、無垢材による安心感をもたらす場所としてデザインされた
 良質なオフィス空間。執務のしやすさに留まらず、新たな木材利用の見える化を表現した情報発信拠点
 としても有効である。」と、評価のポイントが寄せられていました。



 
b0111173_16074007.jpg
 

 新事務所の全景を眺めた写真です。
 木造2階建てで、手前側には木の骨組みを表し、無垢材利用を意識したデザインとしています。
 右に向かって屋根がせり上がり、躍動感のあるダイナミックな外観に仕上がりました。
 ここを通りがかった人からは「何だ、これ?」と、思わず見てしまう建築になっているようです。



 
b0111173_16191260.jpg


 入口を入ると、手前の土間空間から事務室が繋がるようになっています。
 先ほどの外観写真で紹介した木の骨組みが、規則的に連続しているのがよく分かります。
 この骨組みで使用している木材は杉の無垢材で、全て地域産にこだわりました。
 また、この骨組みの間に見えている板張りのような面は、実は厚さが12cmもある杉の無垢パネル
 で、構造材・断熱材・仕上材を兼ねたものとしてチャレンジしています。



 
b0111173_16392115.jpg



 賞状授与のご褒美として撮影していただきました。
 これにおごらず、今後はさらなる上を目指して精進していきます!


 


[PR]
# by mura-toku | 2018-02-08 16:43 | 建築 | Comments(0)

 前回に引き続き、❝ 浜松・夢双庵 ❞ で実践していることを紹介しましょう。


 
b0111173_16432483.jpg


 アプローチ側から外観を見上げたところです。
 大屋根の下方に板を張っている部分が分かるでしょうか。
 何も考えなければ、その下の外壁仕上(現状は下地段階ですが白地に縦の木を張っている部分)
 をそのまま上まで繋げてしまうところですが、そうしませんでした。何故でしょうか?
 この家の一番の顔(アプローチ正面に見える)になるボリュームがかなり大きく、間延びする
 というか、締まらない表情になってしまうからです。
 ちなみに下の仕上は漆喰塗りですので、これと対比する質感のある仕上が求められました。
 いくつか候補は挙がりましたが、最終的には耐久性も考慮した結果、杉赤柾板を選択しています。

 
b0111173_17020623.jpg
 

 先ほどの写真の左側を回り込むと、南面が見えます。
 屋根も耐久性を考えている箇所があるのですが、ここでは正面右側に注目してください。
 左側に比べると外壁が少し後退していて、ちょっとした屋外空間をつくっています。


 
b0111173_17081913.jpg
 


 2階の屋内から外(南方向)を見ると、こんな景色が広がります。
 ここはリビングになるところですが、正面から右手にクランクしてL字型のフルオープン建具
 が嵌り、屋内外が一体になる空間を考えました。
 左側奥に細いシルバーカラーの柱が立っているエリアが屋外になり、インナーバルコニーなど
 と呼ばれたりしています。では何故、こんなことをしているのでしょうか?
 答えは簡単、風雨の影響を極力受けにくい半屋外を設ければ、かなりの頻度でこのスペースを
 活用でき、建具をフルオープンにするメリットが生まれるからです。


 
b0111173_17212085.jpg

 今度は先ほどの写真の右奥に回って、くるっと90度見返したところです。
 このインナーバルコニーは、屋根の下なのでさほど雨に濡れませんが、それでも台風など横殴り
 の雨に当たり続ければ、いずれ消耗していくことが考えられます。
 そこで耐久性の視点から、この部分だけをスチールで組むことにしました。
 全てのスチール材は亜鉛メッキ処理とし、構造木材とは縁を切って納めています。
 これに取り付くスノコや手摺は木製ですが、こちらも耐久性の高い材を選択し、メンテナンス
 費用の低減を提案しました。

 通常は、バルコニーの床を防水仕上にしてしまうことが多いかと思います。
 しかし本来であれば、外界の風をスノコ床の隙間から室内へと呼び込むことで通風量が増え、
 より快適に過ごすことが出来るのを、知らされていないのではないでしょうか?
 クライアントの要望に対し、あらゆるケースを想定しながら複数のメニューを提示できる者が
 プロフェッショナルと言えるのだと思います。


 

[PR]
# by mura-toku | 2018-02-07 17:52 | 建築 | Comments(0)

 今回は、昨年の夏頃から工事が始まっていた ❝ 浜松・夢双庵 ❞ をご紹介しましょう。


b0111173_17080155.jpg


 上棟時の様子を写したものです。木材を上げるためのレッカーのアームが見えていますね。
 旗竿状の敷地で、進入路を登った高台の土地に、ガレージ付きの2階建て住宅を計画しました。
 鳥が羽根を広げながら訪問客を迎え入れる姿を、大屋根で表現しています。


b0111173_17185501.jpg


 上棟後、2か月経過したところです。
 上棟時とほぼ同じ位置から撮ったものですが、敷地の形状がよく分かります。
 登り切った正面(白い車の奥)には2台分のビルトインガレージを設置し、深い庇を掛けました。
 雁行型PLANに合わせた大屋根も、家を風雨から守るために屋根の出を大きくしています。


b0111173_17395191.jpg

 ビルトインガレージ(ブルーシートの右奥)の手前に架けられた深い庇です。
 正面奥から手前に向かって庇の出を大きくしていて、包まれるような安心感を覚えます。
 この庇を構成している木材はそのまま仕上を兼ねていますが、耐久性を考慮して赤身材
 (丸太の芯に近い部分で腐朽しにくい)の無節で揃えてみました。
 美しさと長持ちを兼ね備えたデザインは簡単ではありませんが、理想的な形と言えるでしょう。

 通常よりも長い時間を掛けて、職人たちがコツコツと仕事を進めています。
 それは、かつて日本の家が皆そうであったように、材を吟味し、美しく、上部で長持ちする
 性能の高いものを求めていたからではないでしょうか。
 現代の暮らしに適応しつつ、住まい手の好みに合ったデザインの家を実現させるには、
 それ相応の時間が必要です。
 時間を要する背景には何が潜んでいるのか?これから紐解いていきたいと思います。


 

[PR]
# by mura-toku | 2018-02-06 18:11 | 建築 | Comments(0)