静岡県浜松市にある村松篤設計事務所の所長のブログです


by mura-toku
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 設計をするにあたって重要なポイントはいくつもありますが、中でも慎重に選びたいものの
 ひとつに床材があります。
 その理由は、意匠性・耐久性・居住性をバランスよくクリアしながら、肝心なコストも合格
 しなければならないからです。
 住宅を設計する場合、候補として考えられるのはフローリング・タイル・石・左官・シート
 等がありますが、特に注意が必要なのはフローリングです。
 


 
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 吹抜空間を見下ろしたこの住宅は、2008年に竣工した「浜松・山東庵」ですが、

 

 タイルとフローリングの床材を使用しています。
 タイル仕上の多くは、職人が全体の大きさや色合いを見ながら経験と勘で貼っていきますが、
 現場で下地を造ってからの施工になるので、不具合が出た場合は貼り直しが可能になります。
 これに対してフローリング仕上は、先に貼ってからその上の巾木・壁へと施工していくため、
 将来的に部分的な補修は出来るものの、全面貼り替えは容易ではありません。



 
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 今回の選定にあたって、先に挙げた条件をクリアする床材が中々見つかりませんでした。
 以前から好んで選定している針葉樹の無垢フローリングでは、色合い・木目模様・硬さにおいて
 クリアが出来ず、地元を含め様々な材を当たっては見たものの採用には至らずにいました。
 そんな時、30年前からお世話になっている東京の老舗銘木店に相談したところ、「ラオス松の
 赤柾なら多少は残っているけど」と言われ、すぐに東京まで見に行きました。
 松特有の赤身と柾目が通っているのを見て、これだと確信したのを今でもはっきり覚えています。
 その後、建主ご夫妻にも足を運んでいただき、納得した上での採用となりました。


 
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 昨年の暮れに大事なフローリングは、東京からわざわざ店主自らトラックに積み込み、現場まで
 乗り入れをしていただきました。
 国産の針葉樹無垢フローリングなら、一束(12cm×12cm×3.7m)を一人で担げるのですが、
 目が詰んでいて比重が大きいため、二人掛りでの搬入となりました。
 



 
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 現場搬入後は棟梁自ら梱包を開け、全ての材を確認してから各所への仕分けを行いました。
 無垢材でしかも在庫限り、さらに今は輸入されていない稀少な床材とあり、失敗は許されません。
 赤柾の良材とはいえ、見ての通り少し白っぽいものから赤が強調されているものまでがあるため、
 一枚一枚の特長を見極めながらの作業は相当神経を使います。
 
 針葉樹特有の足触りの良さを感じつつ、広葉樹や金属製の置き家具に耐えうる材としては、ほぼ
 及第点がもらえるものであろうと自負しています。
 経年変化でさらに飴色になり、木目の凹凸を感じられるようになることが、今から楽しみです。
 
 

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# by mura-toku | 2018-02-22 15:19 | 建築 | Comments(0)

 ガレージ付き平屋建ての家が昨年末に上棟を終え、工事が進んでいます。



 
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 静岡県袋井市内の住宅地で、高台に位置しています。
 造成の関係上、道路からの高低差があったため法面の有効利用を考えましたが、協定により
 擁壁の新設は禁止されていることが分かり、そのままの形状としました。
 工事中の家の向う側には森を望むことができ、自然環境には比較的恵まれている立地条件です。



 
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 道路からの高低差が一番少ないところからのアプローチを計画しました。
 正面右手が2台分収容のガレージ、正面中央が玄関で、屋根の高さを微妙に切り替えています。




 
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 北側全景を見下ろしたところです。
 奥の屋根が少し高いエリアが居住空間、手前の低いエリアがガレージや玄関等のサブ空間で、
 扇状に広げた平面が美しくなるように屋根勾配と高さに配慮しています。
 ガレージエリアは車の出入りをしやすいように、少し斜めに振ってみました。
 南側の森が近いことと斜面になっていることもあり、相当な迫力が感じられます。



 
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 南側からの全景です。
 太陽高度が低い時期ではありますが、南側の森の影が敷地に落ちています。
 それでも居住空間の開口部には自然光が射し込むよう、配置には留意しました。

 屋根も十分に太陽光が当たりますので、以前ブログでご紹介した太陽熱利用システムを
 
 この家も導入しています。
 今夏の竣工を目指して、工事は進んでいきます。


 

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# by mura-toku | 2018-02-21 17:51 | 建築 | Comments(0)

 設計をする上で、いつも気になることのひとつが端部のデザインです。
 それは内外を問わず、線や面の終端部の納め方にかなりの時間を要します。
 例えば屋外だったら、最初に考えるの部分は屋根の先端すなわち軒先です。


 
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 手前の足場の陰で見えにくいのですが、2階屋根の右端(左端も同様)は斜めにカットしています。
 外観の印象は屋根の大小に関わらず、ほとんどがこの軒先の見せ方で決まるのです。
 建主の好みを把握し、建築家が答えを出す。今回はシャープなデザインにしてみました。



 
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 軒先に近づくと、斜めにしているのがお分かりになると思います。
 屋根そのものが金属板なので、軒先を同じ素材でカバーしてみました。
 屋根の下に見える半円形の樋も、同種の既製品を使用しています。



 
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 屋根を葺く前の下地は、このようになっています。
 あらゆる仕事がそうであるように、美しい仕上げには下地が重要です。
 変則四角形の断面に加工した木下地を、端部に至るまで慎重に取付けていました。



 
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 他の屋根の端部を下から見上げたところです。
 黒のシャープなラインに白い軒裏(最終的には着色)と無垢板が良く映えます。
 


 
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 軒先コーナーを近づいて見上げると、こんな感じです。
 仕上がってしまえばシンプルに見えるものですが、このデザインが外観の印象を大きく左右します。
 
 「たかが軒先、されど軒先」
 家の外観は、初対面で顔を会わせたときのように、その人の性格が表れるものです。
 私は人やまちに対して、少しでも品よく映るよう、軒先には気を配りたいと思っています。


 

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# by mura-toku | 2018-02-20 16:55 | 建築 | Comments(0)

 現場では、大工を始め各職方がいつも以上に細心の注意を払いながら、工事を進めています。
 というのは、もう手に入らない稀少材を用いたり、代替品が無いため失敗が許されない仕事
 をお願いしているからです。それは全て建主と建築家の拘りから、選定していったものでした。
 ただ、このような材や仕上げをやみくもに選んだわけではなく、双方が要求される機能に対して
 空間をデザインし、さらにそれを活かすために考え抜いた結果だと思っています。


 
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 ここはプライベートルームですが、正面の壁に向かって勾配天井にしました。
 正面の窓は視線が抜けていくポジションに設けていて、勾配天井はそれを助長してくれています。
 床は針葉樹フローリング、壁は漆喰塗りを予定していますが、天井はあらかじめ白色に塗装した
 檜の無節板を目透かし貼り(板間を透かせて目地を取る貼り方)としています。
 理由は、この部屋は一定の時間だけ音が発生するため、吸音目的でこの仕上を選定しています。
 簡単な方法なら無機質の吸音板もありますが、吸放湿性のある自然素材にこだわりました。



 
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 2階のリビングから繋がる畳の間を眺めたカットです。
 屋根裏まで空間を拡張し、広がりのある吹抜にしてみました。
 勾配天井の最上部には、自然光と通風換気に役立つ電動開閉式の天窓を設けています。
 その下の壁の窪みにはエアコンがセットされ、その左側の開口はロフトへと繋がる展開です。
 これら様々な条件をクリアしようとした結果が、このデザインを生んでいったように思います。
 壁と天井は漆喰塗りで、天井には空間を引き締めるために杉柾材を水平に入れてみました。


 
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 リビングの反対側はバルコニーへ繋がる大開口(緑色の柱カバーから右手の丸柱まで)と、右奥
 のダイニングが見通せます。
 天井をあえて寄棟(傘形状にする)にしたのは、視線の抜けを強調したかったからです。
 壁・天井ともに漆喰塗りにしたことで、より空間は明るく開放的な印象になることでしょう。


 
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 リビングに隣接しているダイニングです。
 正面の大きな窓に向かって勾配天井とし、フランス産の板を貼ってみました。
 2階からの眺めへと視線が吸い込まれるように、天井の角度と高さを慎重に決めています。
 天井材の選定にあたっては床材とのマッチングを考え、色合いと柔らかさを備えたものにしました。

 このように、各空間で要求される機能がデザインを生むきっかけになっている場合があります。
 一概には言えませんが、建築にとって機能(要望、環境、住み心地)はとても大切なものなのです。

 
 

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# by mura-toku | 2018-02-16 11:27 | 建築 | Comments(0)

 今年の冬は全国的に冷え込みが厳しく、私が暮らしている静岡県浜松市でも雪こそ降らない
 ものの、氷点下の最低気温を何度も記録しました。
 太平洋岸の特長である温暖な気候に恵まれ、大雪警報が出た日でも風花が舞う程度ですので、
 雪国に暮らされている皆さまからすれば、春の陽気に感じられてしまうことでしょう。
 というわけで、真冬の浜松は連日晴天の日が続きます。


 
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 現在工事中の現場へ行き、屋根の上にあがってみました。
 この日は多少曇りがちでしたが、それでも太陽の温もりを感じる穏やかな天気でした。
 ちょうどここからは、私が30年ほど前に設計した家(右に見える黒い屋根の家:1984年竣工
 蜆塚の家)を望むことが出来ます。



 
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 「 屋根には太陽が住む 」というタイトルの通り、私が暮らしている地域はほぼ一年中、屋根に
 太陽が降り注いでいます。つまり、屋根には太陽が住み着いているようなものなのです。
 温暖な地域とはいえ、冬の夜間は気温が下がりますので、暖房装置は当然必要になりますが、
 この熱源を化石エネルギーに頼るのではなく、極力太陽エネルギーに依存しようと考えました。
 黒色のパネルは高性能の集熱板と断熱された箱がドッキングしたもので、電気を創る太陽光発電
 ではなく、高温の熱(空気)を集める太陽熱利用システムの部材です。
 1軒の住宅で畳3枚~4枚程度のパネルを載せるだけで、室温の向上を図ることが出来ます。



 
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 集熱パネルで得た高温の空気を、家の中へ送りこむための金属製BOXを入れているところです。
 屋根の下地面に穴を開け、部材を差し込みます。



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 差し込んだ後は、空気漏れと防水のためにテープをしっかりと貼り付けます。
 金属製BOXの内側には高温を保つため、銀色の高性能断熱材で覆われているのが分かります。
 ちなみにBOX内で空中に浮いている黒いバーは、温度センサーを取り付けるためのものです。



 
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 集熱パネルの設置が終わり、周りの金属製屋根が葺き終わったところを見上げてみました。
 青空に黒色の屋根が輝いて見え、パネルと屋根が一体になっているように感じました。
 高温の空気は集熱パネルだけでも集めることは出来ますが、このように南面に大きな屋根がある
 場合は、予備集熱としてパネルの手前を金属板で葺かれた方が望ましいでしょう。
 そして、この高温空気を家の中(原則として床下)に取り込むことで、快適な環境が実現します。



 
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 写真の家は、2003年に竣工した

 ですが、この家も同様の太陽熱利用システムを導入していて、1階の床下に空気を送り込むことに
 より、床暖房を図っています。
 ❝ 浜松・夢双庵 ❞ の完成予想とは異なりますが、仕切が少ない吹抜空間をつくることができます。
 つまり、家の中のどこにいても温度差の無い室内環境となり、ヒートショック(室温の低いWCや
 脱衣所・浴室で倒れること)が起きにくくなります。
 また、ひとつながりの家に暮らすことで常に家族の気配が感じられ、良好な家族関係を築いている
 ケースをこれまでいくつも見てきました。
 中には、このような家に影響をされたのか、建築やデザイン等のものづくりを目指す子どもたちも
 生まれてきています。

 家は丈夫で長持ち、格好良くて省エネが一番、といったCMをよく見掛けます。
 どれも分からないわけではありませんが、それを全て満たしたら本当にいい家になるのでしょうか?
 私はこう思います。どんなに密集地でも空を見上げて太陽が出ていれば、それを利用したいと。
 多少のイニシャルコストは掛かりますが、日溜まりのような心地良さは替え難いものがあります。
 家をつくるうえでのポインとは沢山ありますが、自分にとって何が大切かを考えてみたいものです。

 

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# by mura-toku | 2018-02-14 16:13 | 建築 | Comments(0)