静岡県浜松市にある村松篤設計事務所の所長のブログです


by mura-toku
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 最近の住宅は、以前に比べて工事期間がずいぶん短くなりました。
 早いものでは、普通の木造住宅でも2~3か月で完成してしまうことがあるようです。
 その背景には、新商品の登場や現場の省力化によるところがあるかと思いますが、はたして
 それでいいのかと、どうしても考えてしまいます。
 中でも外壁は、「金属板やサイディングのように貼れば完了、メンテナンスフリー」などの
 コメントを鵜呑みにし、多くの住宅で用いられているのが現状です。
 もちろん、これらの仕上材でもそれなりに良い素材を用いたり、表面処理に耐久性を施した
 ものであれば分からなくもないのですが、現場では廉価版が数多く見受けられます。


 
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 この現場では、昔ながらのラスモルタル塗り(防水紙の上に金属の網を貼り、その上にセメント
 と砂を混合したモルタルを塗ること)を漆喰塗りの下地として用いています。
 先に紹介した廉価版のものと比べれば高価にはなりますが、左官職人の手仕事による陰翳や連続
 した面としての魅力には、替え難いものがあるように思います。



 
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 アプローチから見上げた外観です。
 グレーに塗られたモルタル面が、最終的には漆喰塗りの表情に変わります。
 屋根の直下に貼られた杉板とのコントラストも生まれ、今から完成が楽しみです。


 
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 少し外壁に寄ってみたところです。
 「左官仕上はクラックが入るから止めた方が良い。見た目が悪くなるし、最悪のケースは雨漏り
 の原因になる」という声を未だに耳にしますが、これらの多くは施工不良が原因と言われています。
 クラックは様々な要因が考えられますが、一番気を付けなければならない点は下地=下塗りだと
 いってもいいでしょう。仕上げるまでに下地を十分乾かしておくことが、肝心なのです。
 また、クラックからの雨漏りは外壁通気層(外壁と躯体との間に結露防止用の通気を設けている)
 があれば考えられず、逆に雨が侵入した場合はこれを設けていないことになります。


 
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 先ほどの写真の左奥を見返したところです。
 グレーのモルタル面は一部の天井も塗っています。
 屋外の天井に塗る場合は壁以上に注意が必要ですが、確かな仕事であれば何の問題もありません。
 このように直に風雨の影響を受けない設計上の配慮が必要なのは、言うまでもないでしょう。
 外壁も同じように、屋根の出を極力大きく取ったほうが傷みにくいので、注意したいところです。

 どんなケースにおいても言えることですが、建築は長いスパンで考えることが重要です。
 すなわち、工事段階で相応のコストを掛けなければ長持ちはせず、後で後悔することになります。
 やはり良いものは風合いも良くなり、結果的には長持ちするということでしょうか。



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# by mura-toku | 2018-03-01 18:38 | 建築 | Comments(0)

 一般的に2階建て住宅を建てる場合、その多くは1階にリビングを希望されます。
 その理由は、夢にまで見た一戸建てだから、土と接する暮らしをしたいのでしょうか?
 それとも、リビングと連続するアウターデッキに出て、子供と遊びたいのでしょうか?
 どちらも気持ちはよく分かりますが、同時にリビングを天井の高い空間にしたいと思うと
 2階が載っている場合は天井の高さや形状に限界があります。
 もちろん、2階が載らない位置にリビングを設けるようにすれば問題ありません。
 しかしながら、そのほとんどは様々な制約を受けていて、思うようにいかないのが現実です。


 
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 そんな時、これらを解決する方法のひとつに、平屋建ての選択があります。
 相応の敷地が無ければ難しいのかもしれませんが、平屋建てなら屋根裏まで広がる開放的な
 空間をつくることは容易です。
 しかも、通常の水平天井ではなく、屋根と連動した勾配天井が空間に豊かさを加えてくれます。



 
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 写真手前がリビングになる空間ですが、屋根のラインに沿って天井が貼られていきます。
 空間を余すところなく利用した、平屋建てならではの魅力がお分かりいただけるかと思います。
 右上の北側屋根には電動開閉式の天窓を設け、自然の光と風を室内に導くよう考えました。
 この天窓は、1日を通して安定した光と、雨センサー付き(雨が降ると自動的に窓が閉まる)
 なので天候に左右されない常時換気が役立ちます。
 空間を構成している水平・垂直・勾配の木材は、全体の意匠を取り纏めながら並行して構造が
 成立するよう、見せる材と見せない材を分別し、無理の無いように整えています。


 
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 これは、空間を支える梁(柱の上に水平に載る材)の選定をしているところです。
 とても地味な作業ですが、いつも大工棟梁と一緒に時間を掛けて行います。
 色艶や強度の関係から天龍産の杉無垢材を使用することが多いのですが、木目の表情や節・割れ
 の具合を目視しながら、1本1本納得するまで、材を転ばして見せる面を慎重に決めていきます。


 
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 材を選定した後は、このように番付を行います。
 番付とは、その材がどの位置にくるのかを、予め決められた通り番号で示していくことです。
 同時に、長さをカットする位置やどの面を見せるのかを、材に直接描いていきます。

 このように、あらゆる段階において、事前の準備を怠らないことがとても大切です。
 美しさを追求する設計段階での説明はしにくいのですが、丈夫に造っていることを露骨に見せず、
 骨組みを支えている柱や梁の構造材をバランス良く見せることをいつも心掛けています。
 往々にして、美しく組み上がった建築は、決して裏切らない結果を導いてくれるものです。



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# by mura-toku | 2018-02-26 17:39 | 建築 | Comments(0)

 設計をするにあたって重要なポイントはいくつもありますが、中でも慎重に選びたいものの
 ひとつに床材があります。
 その理由は、意匠性・耐久性・居住性をバランスよくクリアしながら、肝心なコストも合格
 しなければならないからです。
 住宅を設計する場合、候補として考えられるのはフローリング・タイル・石・左官・シート
 等がありますが、特に注意が必要なのはフローリングです。
 


 
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 吹抜空間を見下ろしたこの住宅は、2008年に竣工した「浜松・山東庵」ですが、

 

 タイルとフローリングの床材を使用しています。
 タイル仕上の多くは、職人が全体の大きさや色合いを見ながら経験と勘で貼っていきますが、
 現場で下地を造ってからの施工になるので、不具合が出た場合は貼り直しが可能になります。
 これに対してフローリング仕上は、先に貼ってからその上の巾木・壁へと施工していくため、
 将来的に部分的な補修は出来るものの、全面貼り替えは容易ではありません。



 
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 今回の選定にあたって、先に挙げた条件をクリアする床材が中々見つかりませんでした。
 以前から好んで選定している針葉樹の無垢フローリングでは、色合い・木目模様・硬さにおいて
 クリアが出来ず、地元を含め様々な材を当たっては見たものの採用には至らずにいました。
 そんな時、30年前からお世話になっている東京の老舗銘木店に相談したところ、「ラオス松の
 赤柾なら多少は残っているけど」と言われ、すぐに東京まで見に行きました。
 松特有の赤身と柾目が通っているのを見て、これだと確信したのを今でもはっきり覚えています。
 その後、建主ご夫妻にも足を運んでいただき、納得した上での採用となりました。


 
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 昨年の暮れに大事なフローリングは、東京からわざわざ店主自らトラックに積み込み、現場まで
 乗り入れをしていただきました。
 国産の針葉樹無垢フローリングなら、一束(12cm×12cm×3.7m)を一人で担げるのですが、
 目が詰んでいて比重が大きいため、二人掛りでの搬入となりました。
 



 
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 現場搬入後は棟梁自ら梱包を開け、全ての材を確認してから各所への仕分けを行いました。
 無垢材でしかも在庫限り、さらに今は輸入されていない稀少な床材とあり、失敗は許されません。
 赤柾の良材とはいえ、見ての通り少し白っぽいものから赤が強調されているものまでがあるため、
 一枚一枚の特長を見極めながらの作業は相当神経を使います。
 
 針葉樹特有の足触りの良さを感じつつ、広葉樹や金属製の置き家具に耐えうる材としては、ほぼ
 及第点がもらえるものであろうと自負しています。
 経年変化でさらに飴色になり、木目の凹凸を感じられるようになることが、今から楽しみです。
 
 

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# by mura-toku | 2018-02-22 15:19 | 建築 | Comments(0)

 ガレージ付き平屋建ての家が昨年末に上棟を終え、工事が進んでいます。



 
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 静岡県袋井市内の住宅地で、高台に位置しています。
 造成の関係上、道路からの高低差があったため法面の有効利用を考えましたが、協定により
 擁壁の新設は禁止されていることが分かり、そのままの形状としました。
 工事中の家の向う側には森を望むことができ、自然環境には比較的恵まれている立地条件です。



 
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 道路からの高低差が一番少ないところからのアプローチを計画しました。
 正面右手が2台分収容のガレージ、正面中央が玄関で、屋根の高さを微妙に切り替えています。




 
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 北側全景を見下ろしたところです。
 奥の屋根が少し高いエリアが居住空間、手前の低いエリアがガレージや玄関等のサブ空間で、
 扇状に広げた平面が美しくなるように屋根勾配と高さに配慮しています。
 ガレージエリアは車の出入りをしやすいように、少し斜めに振ってみました。
 南側の森が近いことと斜面になっていることもあり、相当な迫力が感じられます。



 
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 南側からの全景です。
 太陽高度が低い時期ではありますが、南側の森の影が敷地に落ちています。
 それでも居住空間の開口部には自然光が射し込むよう、配置には留意しました。

 屋根も十分に太陽光が当たりますので、以前ブログでご紹介した太陽熱利用システムを
 
 この家も導入しています。
 今夏の竣工を目指して、工事は進んでいきます。


 

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# by mura-toku | 2018-02-21 17:51 | 建築 | Comments(0)

 設計をする上で、いつも気になることのひとつが端部のデザインです。
 それは内外を問わず、線や面の終端部の納め方にかなりの時間を要します。
 例えば屋外だったら、最初に考えるの部分は屋根の先端すなわち軒先です。


 
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 手前の足場の陰で見えにくいのですが、2階屋根の右端(左端も同様)は斜めにカットしています。
 外観の印象は屋根の大小に関わらず、ほとんどがこの軒先の見せ方で決まるのです。
 建主の好みを把握し、建築家が答えを出す。今回はシャープなデザインにしてみました。



 
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 軒先に近づくと、斜めにしているのがお分かりになると思います。
 屋根そのものが金属板なので、軒先を同じ素材でカバーしてみました。
 屋根の下に見える半円形の樋も、同種の既製品を使用しています。



 
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 屋根を葺く前の下地は、このようになっています。
 あらゆる仕事がそうであるように、美しい仕上げには下地が重要です。
 変則四角形の断面に加工した木下地を、端部に至るまで慎重に取付けていました。



 
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 他の屋根の端部を下から見上げたところです。
 黒のシャープなラインに白い軒裏(最終的には着色)と無垢板が良く映えます。
 


 
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 軒先コーナーを近づいて見上げると、こんな感じです。
 仕上がってしまえばシンプルに見えるものですが、このデザインが外観の印象を大きく左右します。
 
 「たかが軒先、されど軒先」
 家の外観は、初対面で顔を会わせたときのように、その人の性格が表れるものです。
 私は人やまちに対して、少しでも品よく映るよう、軒先には気を配りたいと思っています。


 

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# by mura-toku | 2018-02-20 16:55 | 建築 | Comments(0)