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静岡県浜松市にある村松篤設計事務所の所長のブログです


by mura-toku
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" モデルハウス・重層の甍 " 工事進行中!


 兵庫県尼崎市を拠点とし、その周辺一帯で仕事を展開されている、株式会社いなほ工務店。

 耐震性能や省エネルギー性能に拘りつつ、建主の要望に寄り添った住宅を手掛けている工務店だ。

 以前から、社長とは工務店ネットワークの勉強会や設計塾への参加を通じてのお付き合いがあり、

 その熱意と素直な姿勢にはいつも感心させられていた。

 そんなある日、社長自ら「モデルハウスの設計をお願いしたいんだけど、打合せを兼ねて現地へ

 来てもらえませんか」と、突然の連絡が入った。

 残暑厳しい中、まずは足を運んでみることにした。




 
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 現地に案内され、正直ここにモデルハウスを建てるのか?と、思ってしまったのが立地の悪さ。

 前面道路が狭く、敷地が変形、周囲は家で囲まれ、おまけに上空にはジェット機が飛んでいる。

 そういえば、すぐ近くには大阪国際空港があるので、日中は爆音が鳴り響いてもいた。

 どうしてこの敷地にされたのかと伺うと、「家から飛行機を見たいから」と、もとさんは即答。

 (ちなみに、もとさんは本社長のことで、いつもこう呼ばせていただいている。)

 これを聞いた私は「面白い!男のロマンだな」と、妙に納得させられてしまうのであった。



 
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 モデルハウスの現地確認をした翌日、本さんと一緒に篠山の町並みを見学した。

 ここは、河原町妻入商家群といって、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

 家には、大きく分けて平入(ひらいり)と妻入(つまいり)があり、それぞれ家への出入りを

 三角屋根の瓦が見える面に設けるのが前者、瓦が見えない面から設けるのが後者で呼んでいる。

 古民家や町家で多く見受けられるのは平入だが、妻入の商家が建ち並ぶ姿は珍しく感じられた。

 家の形態や美しいプロポーションはいうまでもなく、和瓦の表情に見入ってしまうほどであった。



 
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 瓦の魅力にとりつかれた私は、日を改め工務店のスタッフと一緒に、淡路島へ素材探しに出掛けた。

 淡路は瓦の産地であり、以前と比べて工場の数は減ったものの、今でも小さな工場が点在している。

 出掛ける前に、候補の工場へ連絡を取っていただいたおかげで、効率よく見学をすることが出来た。

 モデルハウスで、実際にどの瓦をどこに使用したかについては後で述べるとして、瓦の製造を間近に

 見ることを出来たのが大きい収穫であった。



 
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 年が明けて昨年の秋、2日間にわたり上棟を行った。

 木材の架構を表しにして意匠と構造を融合させたい設計手法は崩さず、いなほ工務店の拘りである

 耐震等級3を確保するために、木材の強度や木柄を吟味した国産の杉・桧の骨太乾燥無垢材(今回は

 浜松市天竜材を選択)を躯体に採用している。

 ガッチリと木組みされていく現場の上空には、空港へと降り立つ飛行機の姿が・・・。

 この姿を家の中のどこから見えるように考えたのかは、完成してからのお楽しみにしておくとして。




 
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 上の写真は2階の大屋根と越屋根を、下の写真は2階の外壁の工事中の模様を、それぞれ現場から

 送っていただいたものです。

 屋根の瓦はエッジが特徴的でシャープな印象に、外壁の瓦は珍しい大判の平板瓦を重ね葺きにして

 いて、どちらも個性的な仕上がりになったように思います。

 というのも、新型コロナウイルスの影響で現場へ行くことが出来ず、今でもこのように写真と電話

 を利用して現場担当者とコミュニケーションを図っています。



 ところで、モデルハウスの名称である"重層の甍"について、少しだけ触れておきたいと思います。

 先に述べたように、立地条件が決して良くない敷地ですが、それでも一番居心地が良さそうな場を

 探して2階のある位置にリビングを据えてみました。

 ただ、普通にプランニングをしてしまうと、周囲からの視線や騒音が気になってしまうので、必要

 な部位に空間(エリア)をバッファーとして重ねることで、解決を図ろうと考えました。

 また、屋根や外壁には騒音を低減する目的で、堅牢な印象を醸し出す鎧を纏った瓦を用いています。

 

 このモデルに関する情報は、以下の2つのサイトでも公開されていますので、是非ご覧ください。
 




by mura-toku | 2020-07-01 15:17 | 建築