KAIT工房探訪~その3
2011年 06月 15日
今日は、KAIT工房探訪の最終回です。
主に、建築設備とエネルギー効率についてお話をしたいと思います。
この建築物には、外壁なるものが存在しません。
その代わりに、透明ガラスが壁全面に張られています。
室内を見られないようにするためか、上からビニールシートが下がっていたり・・・。
直射日光を少しでも遮りたいためか、スクリーンが下りているところがありました。
通常の外壁は壁の中に断熱材を入れて、これを隠すために仕上げ材で覆っている
ため、屋外が見えないいわゆる壁が存在します。
また、この手法によると屋外の温度環境を受けにくいため、エネルギー効率が上昇
する即ち、夏は涼しく冬は暖かく室温のコントロールが可能になるというわけです。
少し分かりにくいかもしれませんが、写真の右端と左端に床置き型エアコンが置か
れています。よく見ると、設置している方向 (風の出る向き) が違いますね。
これは全館空調 (部屋全体をエアコン等で制御する方法) にしないで、それぞれの
場を別々に暖めたり冷やしたりする個別空調に拠っているからだと聞きました。
天井の高さが4~5mあるそうですが、床から2mくらいまでの温度をコントロール
させるからこれでいいそうです。
部屋のコーナーの天井を見上げたところです。
実はこの天井、屋根の裏面に白色塗装しているだけ、ガラスはシングルです。
いたってシンプルと言えなくはないのですが、外界の影響を最も受けやすいですね。
学生が使う場なので、暑さ寒さを感じるのも教育の一環と考えているのでしょうか?
通常は赤色で目立つ消火栓は、白く塗られていました。
先ほど写っていた床置きエアコンも真っ白一色に塗られていて、消火栓ともどもその
存在感を消そうとしている意図がうかがえます。
気になるエアコンの設定温度は、25℃。
いくら快晴の天気とはいえ、真冬の1月で壁も天井も (床は?) 無断熱ですから、
これでも寒いくらいの設定なのでしょう。
なぜなら、この〝エコ・マニフェスト〟冬の設定温度は20℃としているでは
ありませんか?夏の28℃設定は、はたして実現できているのでしょうか?
ヨーロッパの各国がエネルギーの大転換を選択し始めている中、エアコンだけに
頼らなければならない建築物は、大幅な見直しを図るべきではないかと思います。
出来る限り自然エネルギーを享受し、場のポテンシャルを活かした設計を行うこと
で、極力機械に頼らない建築物を提供することが、私たち設計者に与えられた使命
であると、考えたいのですが・・・。
by mura-toku
| 2011-06-15 15:02
| 建築