鉄の骨!
2011年 02月 16日
昨年から読んでみたいと思っていた本がこれ、 「鉄の骨」 。
建築や土木工事に携わる、ゼネコンの談合疑惑をテーマにした作品である。
作家は 「果つる底なき」で第44回江戸川乱歩賞を受賞された、池井戸潤(いけいどじゅん)。
現代社会の闇の部分を鋭くえぐりながら、其処に潜んでいる問題点を掘り下げていく展開には
いつもスリリングな結末が用意されていて、読者にはたまらない興奮を与えてくれる。
今回読破したこの本には、現在忘れ去られようとしている〝談合〟を必要悪と考えるその裏側に
どんなことが潜んでいて、私たち日常の生活にもそれは継続して行われているのではないかという
仮想現実が見事に描かれている。
一方で政治家が関与するマネーロンダリング (資金洗浄) 疑惑の解明に検察が動いたり、
ゼネコンへの融資の調整が経営査定のみにより決定される金融機関の内部事情があったり、
ゼネコンマンとエリート銀行マンのそれぞれの立場により築かれていく価値観の相違だったりと、
話は指名入札という大舞台の中でこれらが複雑に絡み合いながら進んでいく。
建築や土木関係の方は勿論、とくに関わりのない方も是非お読みいただきたい1冊である。
いつも、買ってからすぐに表紙を取って読み始めるので、買う前は気付かないものなのだが、この本の
剥き出しの装丁がとても素敵なのだ。
「鉄の骨」 というタイトルに相応しいデザイン。我々建築に携わる者はこれをすぐに〝鉄骨〟と呼んで
しまいがちだが、あえて間にのの一字を挿入することで私は脆さを強調したかったからなのでは
ないかと、これを見ながらしばし考え込んでしまった。
しばらく池井戸潤の世界に染まっていくかのように、次の本を手に取りすでに読み始めている。
by mura-toku
| 2011-02-16 11:39
| 趣味