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静岡県浜松市にある村松篤設計事務所の所長のブログです


by mura-toku
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 社会に出て間もないころ、必死にもがきながら設計した一軒の住宅がある。

 設計に2年、工事に1年の時間を費やした、工務店としては異例の仕事であった。

 地元の工業高校を卒業してから、連日深夜まで働く環境の中で、この仕事は私にとって

 遣り甲斐があるとともに、高い壁に押しつぶされそうになった記憶が今でも残っている。



 
メンテナンス可能なバルコニー!_b0111173_09493584.jpg



 与えられた敷地は、浜松市内の文教地区で静かな環境ではあるものの、道路から背丈以上の

 高低差があり、しかも多角形ゆえ素直な形状で建てられそうな平地は限られていた。

 それでも敷地の広さに余裕はあったので、変形プランであれば纏められると思ったのだが、

 最後まで苦しめられたのが駐車スぺースの確保である。

 隣家のように土地を大きく削って、道路とほぼ平らに造成すれば複数台の駐車は可能だが、

 その分家を建てるスペースが小さくなってしまう。

 思案した挙句、コスト増にはなるが、コンクリート製ガレージの上に家を載せることにした。



 
メンテナンス可能なバルコニー!_b0111173_10140896.jpg



 道路の向かい側には、家族が楽しめる小さな公園がある。

 町の人々が集う場であることを意識して、優しい表情に見えるよう屋根をむくらせてみた。

 長い年月に耐え、将来でも手に入るであろう銅板屋根と漆喰塗り外壁の選択は、いつの時代

 でも変わらない安心感へと繋がることであろう。




 
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 ガレージ脇の屋外階段を上がった先に、下屋(1階の屋根)を差し掛けた玄関がある。

 床は、内外とも信州から松の木煉瓦を埋め込んだことで、足底の感触が何とも心地いい。

 室内の壁は白色の漆喰塗りで、濃茶色の木部とのコントラストもあってか、色褪せない。




 
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 読書好きの夫婦が楽しめる場になるようにと考えたのは、階段踊り場の書棚であった。

 結果は階段の途中に設けたことで、子供たちが本に興味を示すようになったことである。

 子供は親の背中を見て育つと言われるが、親が読む本を見て育つ子供もいることを教えられた。

 37年を経過した今でも、無垢の杉板フローリングと漆喰塗りは現役で、輝きを増している。




 
メンテナンス可能なバルコニー!_b0111173_10484344.jpg



 家族や友人・知人が集う場は、多人数でも対応が出来る畳敷きの広間とした。

 縁無しの畳は床一面が藺草の絨毯のように美しく見えるが、角の消耗が激しいため表替えは

 縁付きの畳よりも頻繁にしなければならないことを知ったのは、この仕事を通してである。

 古民家を思わせる太い木組みと白い壁、無垢の板と紙貼り障子を用いた理由は、建主の強い

 要望であった「陶芸家:河井寛次郎の精神を家に注入せよ」からきている。

 成人式を終えたばかりの若造に、この仕事を任せてくれたご夫妻には感謝しかない。




 
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 前置きが長くなったので、本題に入ろう。

 この写真は、竣工当時に撮影した東側の外観である。

 手前の道路からさらに一段下がったところに、女学生が歩く遊歩道があるため、そこから

 見上げたときに少しでも心が和むようにと思い、デザインしたことを思い出した。

 「緩勾配のむくり屋根が漆喰塗りの家を覆い、伝統的な民家に見えるように仕上げたいと」

 ただひとつ気掛かりだったのは、2階に設けたバルコニーの処理であった。

 なぜなら、古民家には西洋から渡ってきたバルコニーなど存在しないからである。

 それに加え、当時の防水技術は確かなものでは無いと感じていたので、それなら将来に

 わたってメンテナンスが出来る木製のバルコニーを提案しようと考えた。



 
メンテナンス可能なバルコニー!_b0111173_11142846.jpg



 長い間、耐え抜いてきた木組みのバルコニーが悲鳴を上げたのは、一昨年であった。

 木のスノコだけでなく、柱や梁に虫食いの跡が見られたのである。

 例えばこんな時、普通の造り方をしていたら、バルコニーだけを撤去することは難しく、

 家の一部も壊してから復旧する大工事が伴う。

 私は、現場を見てから、当時の図面を広げてみて安堵した。

 これなら、大工事をしなくてもバルコニーだけ交換が可能だ。




 
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 長い年月を経たおかげで、どの部分を注意して設計した方が良いのかがよく分かった。

 最終の塗装前の状態の写真ではあるが、家全体のデザインを壊すことなく、バルコニーは

 無事によみがえったのである。

 古びた言葉ではあるが、木と土と紙でつくる家はメンテナンスさえしっかりしていけば、

 朽ちることなく長持ちすることが立証することが出来たように思う。

 そのためには、予めメンテナンス出来るように設計を行い、正しく施工されていることが

 必須ではあるのだが・・・。


 この家の詳細をお知りになりたい方は、「まちの語り部になる家」をご覧ください。

 

 

 
 



 






# by mura-toku | 2020-10-02 16:48 | 建築

猫たちとの暮らし!


 今年に入って間もなく、新型コロナウイルスの感染防止が叫ばれると、政府からの

 自粛要請を受け、ステイホームを送ることが多くなりました。

 メディアは連日コロナの話題を取り上げ、最初は感染者の数字に一喜一憂していた

 のですが、ここまで長期戦が続くと少しは疲れを感じないわけにはいきません。

 そんな時、疲れを癒して欲しいという声に応えてくれるかのように、動物を扱った

 TV番組が数多く放映されるようになりました。

 中でも、飼い主からの投稿による犬や猫の動画は、思わず笑みが零れてしまいます。

 動物たちとの暮らしは、日常のストレスを発散させてくれるのでしょうか。

 


 
猫たちとの暮らし!_b0111173_10122270.jpg


 我が家には二人のこども(親バカかもしれませんが、家族の一員なのでこう呼んでいます)

 がいて、帰宅するといつもお迎えに来てくれます。

 右がノアくん(11歳の男の子)、左がクルミちゃん(1歳の女の子)で、硝子越しの姿を

 見せてくれるだけで疲れが吹き飛んでしまいそうです。

 家の中に猫の視線を考えた仕掛けをしておくと、暮らしが豊かになるような気がします。




 
猫たちとの暮らし!_b0111173_10330257.jpg


 時には、こんな想定外なことが起こります。

 床の間の幕板上からこちらに視線を向けているのは、遊び盛りのクルミ。

 右手の床柱を這いあがっていったと思われますが、達成感に溢れていました。

 もしかしたら、坪庭を上から覗きたかったのかもしれませんね。



 
猫たちとの暮らし!_b0111173_10403517.jpg


 フロアスタンドに抱きついているジジを獲物と思い込み、必死に捕らえようとしている

 仕草が何とも可愛らしく、思わずシャッターを切りました。

 この子は歯が丈夫なのか、ジジを床に落とした後は、決まって時々ワイヤーを噛み切ろう

 としているから驚きです。

 自在に手元を明るくしてくれるスタンド照明はとても便利なのですが、それ以上にクルミ

 にとっては良い遊び道具なのでしょうね。




 
猫たちとの暮らし!_b0111173_10485214.jpg


 リビングの障子をよじ登ろうとしたこどもは、これまでおりませんでした。

 障子の横桟に前と後ろの足を器用に掛けている後ろ姿は、まるでアスリート。

 家の断熱と調湿を考えて障子を嵌めてみましたが、この懸垂のような活用も

 有りなのかも?と思ってしまいました。

 とにかく、家の中を走り回ったり、ジャンプを繰り返したりするからなのか、

 足の筋肉がムキムキしてきたみたいです。




 
猫たちとの暮らし!_b0111173_11093500.jpg


 作品集で紹介している「遠江・奏庵」は我が家なのですが、そこに写っている初代の

 愛猫(ベル)から全員がこの梁を渡り歩いてくれています。

 

 この行動は設計段階で描いていたものなので、本当に嬉しかったですね。

 ノアとクルミは時々ここでバトルを繰り広げて、たまにクルミが落下しそうに

 なっていますが、二人にとっては楽しい遊び場になっているようです。




 
猫たちとの暮らし!_b0111173_13484218.jpg


 遊び疲れた後は、ノアの背中を踏み踏みするリラックスタイムに。

 クルミはノアのことが大好きなようで、いつもノアの面倒を見ています。

 二人にとって居心地がいい場所は季節によって変わりはしますが、寒い時期は

 決まって私のベッドの上がお気に入りのようです。

 

 我が家にとって、この子たちは欠かせない存在になりました。

 音に敏感で気が優しく甘えん坊のノアと、寂しがり屋でよく鳴きよく遊ぶクルミは、

 いつもそばに居て励ましてくれる良きこども達です。

 私達の想像を超える行動は驚きの連続ですが、それよりも良い勉強になっています。

 二人が住む家は覗き窓あり、空中の場があり、吹抜があったりと、少し変化にとんだ

 遊園地のような居場所だと思っていることでしょう。

 猫たちとの暮らしは、飽きのこないドキュメンタリー映画を見続けているようです。

 

 

# by mura-toku | 2020-07-27 14:39 | 癒し


 今年の梅雨は長雨の影響で湿度が下がらず、気分が滅入ってしまいそうですね。

 世間では「洗濯物が乾かなくて困っている」「家の中がベタベタしていて不快だ」

 といった、家に対する不満の声がよく聞かれます。

 例年では、窓を締めてエアコンを掛ければ湿度が下がり、室内は快適になるはず

 ですが、今は新型コロナウイルス感染防止のために窓を開けていることと、室内

 干しの洗濯物から出される水分が加わることで、湿度は思うように下がりません。

 そこで考えたいのは、換気の方法です。



 
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自然換気について考える!_b0111173_14060049.jpg


 上の写真は、2018年に竣工した「浜松・夢双庵」で、南側からの全景です。

 

 夏期の季節風を積極的に取り入れるため、南面に大きな窓を設けました。

 周辺環境を考慮し、日照と眺望を確保するために2階リビングとしています。

 正面の右半分は、下の写真で分かるように屋根付きバルコニーとして、雨の日でも

 窓を開けて過ごせるように計画しました。

 ここで重要なのは、床を防水にせず、簀子にして下から外気を通していることです。

 こうすることで、軒下の涼しい風を部屋へ導くことが可能になりました。



 
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 上の写真は、2階バルコニーからリビングを見たところです。

 正面左上から室内へと光が射し込んでいるところに、開閉式の天窓を設けました。

 暖まった空気は上昇する原理を利用して、部屋の一番高い箇所から排気(換気)

 することを計画しています。

 南から入ってくる大きな風の出口をあえて絞ることで、風速を早めているのです。

 下の写真は、家の裏側すなわち北側から見た全景ですが、天窓が見えますね。





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 もうひとつの手法として紹介するのは、2011年に取り組んだ「びおハウスM」です。

 

 一番上の写真は、北九州市で計画した、びおハウスMの連棟住宅の模型になります。

 2棟とも、屋根から飛び出ているのが分かるかと思いますが、それを実際に見たのが

 中央の写真で、頂部には天窓を設けています。

 下の写真は屋内から見上げたところですが、この部分は煙突状に造っているのです。

 これはヒートチムニーと呼ばれていて、煙突効果により室内の熱気が上昇し、より

 多くの空気を天窓から排気することが出来るようになります。

 

 現在、このコンセプトハウスをリニューアルしようかと計画中です。

 これまで考えてきた原理を整理し、現代の暮らしにあったデザインを模索しています。

 機械で制御するシステムではなく、自然の力を利用した住宅を追い求めて・・・。


 

# by mura-toku | 2020-07-14 17:24 | 建築

 兵庫県尼崎市を拠点とし、その周辺一帯で仕事を展開されている、株式会社いなほ工務店。

 耐震性能や省エネルギー性能に拘りつつ、建主の要望に寄り添った住宅を手掛けている工務店だ。

 以前から、社長とは工務店ネットワークの勉強会や設計塾への参加を通じてのお付き合いがあり、

 その熱意と素直な姿勢にはいつも感心させられていた。

 そんなある日、社長自ら「モデルハウスの設計をお願いしたいんだけど、打合せを兼ねて現地へ

 来てもらえませんか」と、突然の連絡が入った。

 残暑厳しい中、まずは足を運んでみることにした。




 
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\" モデルハウス・重層の甍 \"  工事進行中!_b0111173_17545170.jpg


 現地に案内され、正直ここにモデルハウスを建てるのか?と、思ってしまったのが立地の悪さ。

 前面道路が狭く、敷地が変形、周囲は家で囲まれ、おまけに上空にはジェット機が飛んでいる。

 そういえば、すぐ近くには大阪国際空港があるので、日中は爆音が鳴り響いてもいた。

 どうしてこの敷地にされたのかと伺うと、「家から飛行機を見たいから」と、もとさんは即答。

 (ちなみに、もとさんは本社長のことで、いつもこう呼ばせていただいている。)

 これを聞いた私は「面白い!男のロマンだな」と、妙に納得させられてしまうのであった。



 
\" モデルハウス・重層の甍 \"  工事進行中!_b0111173_10324964.jpg


 モデルハウスの現地確認をした翌日、本さんと一緒に篠山の町並みを見学した。

 ここは、河原町妻入商家群といって、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

 家には、大きく分けて平入(ひらいり)と妻入(つまいり)があり、それぞれ家への出入りを

 三角屋根の瓦が見える面に設けるのが前者、瓦が見えない面から設けるのが後者で呼んでいる。

 古民家や町家で多く見受けられるのは平入だが、妻入の商家が建ち並ぶ姿は珍しく感じられた。

 家の形態や美しいプロポーションはいうまでもなく、和瓦の表情に見入ってしまうほどであった。



 
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\" モデルハウス・重層の甍 \"  工事進行中!_b0111173_11221896.jpg

 
 瓦の魅力にとりつかれた私は、日を改め工務店のスタッフと一緒に、淡路島へ素材探しに出掛けた。

 淡路は瓦の産地であり、以前と比べて工場の数は減ったものの、今でも小さな工場が点在している。

 出掛ける前に、候補の工場へ連絡を取っていただいたおかげで、効率よく見学をすることが出来た。

 モデルハウスで、実際にどの瓦をどこに使用したかについては後で述べるとして、瓦の製造を間近に

 見ることを出来たのが大きい収穫であった。



 
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 年が明けて昨年の秋、2日間にわたり上棟を行った。

 木材の架構を表しにして意匠と構造を融合させたい設計手法は崩さず、いなほ工務店の拘りである

 耐震等級3を確保するために、木材の強度や木柄を吟味した国産の杉・桧の骨太乾燥無垢材(今回は

 浜松市天竜材を選択)を躯体に採用している。

 ガッチリと木組みされていく現場の上空には、空港へと降り立つ飛行機の姿が・・・。

 この姿を家の中のどこから見えるように考えたのかは、完成してからのお楽しみにしておくとして。




 
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 上の写真は2階の大屋根と越屋根を、下の写真は2階の外壁の工事中の模様を、それぞれ現場から

 送っていただいたものです。

 屋根の瓦はエッジが特徴的でシャープな印象に、外壁の瓦は珍しい大判の平板瓦を重ね葺きにして

 いて、どちらも個性的な仕上がりになったように思います。

 というのも、新型コロナウイルスの影響で現場へ行くことが出来ず、今でもこのように写真と電話

 を利用して現場担当者とコミュニケーションを図っています。



 ところで、モデルハウスの名称である"重層の甍"について、少しだけ触れておきたいと思います。

 先に述べたように、立地条件が決して良くない敷地ですが、それでも一番居心地が良さそうな場を

 探して2階のある位置にリビングを据えてみました。

 ただ、普通にプランニングをしてしまうと、周囲からの視線や騒音が気になってしまうので、必要

 な部位に空間(エリア)をバッファーとして重ねることで、解決を図ろうと考えました。

 また、屋根や外壁には騒音を低減する目的で、堅牢な印象を醸し出す鎧を纏った瓦を用いています。

 

 このモデルに関する情報は、以下の2つのサイトでも公開されていますので、是非ご覧ください。
 




# by mura-toku | 2020-07-01 15:17 | 建築

 ここ数年、恒例行事になっている建築設計者のための設計塾。

 昨年11月に博多で開催した後、しばらく体調を崩しておりました。

 おそらく免疫力が落ちたことが要因かと思われますが、なんとか昨年末までには回復。

 今年の設計塾の構想を練ろうとしていた矢先に、新型コロナウイルスの感染拡大が始まりました。

 そんなわけで、ブログの更新が滞ってしまいましたが、少しづつ再開したいと思います。



 塾の記事は、これまで時系列で書いてきましたが、これからは印象に残ったものを紹介いたします。

 今回は、博多で開催した塾の中で、最も心に響いた建築から。





 
\" 村篤設計塾2019in博多"河庄!_b0111173_14414172.jpg

 
 西中州の名店「河庄」です。

 寿司・割烹で知られている名店で、60年もの間、博多市民に愛されてきました。

 私が敬愛する吉村順三氏による設計で、縦格子のファサードが印象的な建築です。

 これは、通りを歩く人からの視線を遮りながら、適度な光を屋内へ導くためのもので、

 京都や高山の町家で用いられている木格子に通じるものがあります。




 
\" 村篤設計塾2019in博多"河庄!_b0111173_14533933.jpg


 エントランスの先には、寿司職人が客の様子を見渡せるような構成になっていました。

 決して広い店ではなく、かつ天井が高いわけでもないのに、視線が遠くへ運ばれることにより、

 とても気持ち良い空間が展開されていたように思います。

 そう言えば、ずいぶん昔にここを覗いた時、名力士ご夫妻がカウンターで寿司を摘まんでいました。

 その時は気づきませんでしたが、吉村さんは客同士が顔を合わせないように考えていたのでしょう。




 
\" 村篤設計塾2019in博多"河庄!_b0111173_15043231.jpg


 前の写真右手に見える階段を上がった先にあるのが、畳敷きの寄り付きです。

 仕上材の選定には目を見張るものがありますが、天井の構成や照明計画は参考になりました。

 右側窓の内側に嵌めてある障子は、自然光を入れるためなのか、上下だけあえて設けていません。




 
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 寄り付きの正面にある、大広間に通されました。

 人数が多いからなのかもしれませんが、私はこの部屋になぜか親近感を覚えたのです。

 始めて来たのにと思いましたが、よく考えたらここはよく建築誌で紹介されている部屋なのでした。

 時間の許す限りじっくり見ようと努力しましたが、大変美味しい食事の魔力に導かれたおかげで、

 結局この部屋の床の間だけ注視することにしました。




 
\" 村篤設計塾2019in博多"河庄!_b0111173_15223033.jpg


 ここだけ見ていても、興奮冷めやらず、何度もシャッターを切ってしまいました。

 正面から見ているだけでは分からない壁の凹凸が、この空間を引き締めていて、さらに床柱を奥へ

 立たせることで、床の間と床脇を柔らかく繋げていることを、さりげなくやっていたのです。

 手前の床脇の三段ニッチの寸法は絶妙で、奥に朱色の和紙を貼り、焼物が輝いて見えました。

 その足元を見ると、地板と腰貼りの和紙の色調を合わせているではありませんか。

 これにより、床脇が床から浮いて見えるように、吉村さんは考えていたのでしょう。




 
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 床の間と床脇をアップで見たところです。

 左に見える焦げ茶色の地板の上に、右側からL型の床框が載っていて、その先に床柱が立っています。

 銘木(建築の世界では吟味された木材のことをいう)好きなら、思わずよだれを垂らしてしまいそう。

 また、その材の良さだけではない、この魅力は床に寝そべらないと発見できませんでした。




 
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 目を凝らして見てください。

 左の地板から、右の床框が浮いて見えるのがお分かりでしょうか?

 実際は浮いているのではなく、床框の正面下は上と同じ大面取り(材の角を大きく斜めにカットする)

 をしていることで、床から浮いているように見せていたのです。

 しかも、この床框は面取り以外の平面(上面と横面)を漆塗りにして、浮いた感じを際立たせている

 ことも、よく理解できました。

 こんなことをしていたら、早くも時間切れに。

 美味しい料理も堪能しなければと、箸を進めることにしました。




 
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 最後に、また行きたいと思わせた絶品ランチのご紹介。 

 本来は寿司懐石なので、もっと品数は多いのですが、中でも舌に残った前菜と寿司盛りです。

 寿司ネタは季節によって変わるのかもしれませんが、私はオリーブオイルで食す卵焼きが一番でした。

 建築好きとグルメ好きの方は、ぜひ博多の名店にお立ち寄りされることをお薦めします。

 

 

# by mura-toku | 2020-06-10 16:09 | 建築