静岡県浜松市にある村松篤設計事務所の所長のブログです


by mura-toku
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28

 先日、昨年に竣工した " FUKUROI・FOREST HOUSE " を訪問しました。



 
b0111173_17533195.jpg


 あいにく霙まじりの肌寒い天候でしたが、玄関前の植栽が潤いを与えてくれていました。




 
b0111173_17555831.jpg


 すっかり新居に馴染んだ住まい方が、とても印象的でした。

 リビングの大開口からは、木のデッキ越しに芝庭と森の緑を眺めることが出来ました。

 今回訪問した理由は、今月末に開催される「町の工務店ネット全国総会 in 遠州」で見学をさせて

 いただくにあたり、注意点などを住まい手と打合せする必要があったからです。

 事務局からは、大型バスで100名を超える会員の皆様が見学に来られると聞いていたので、詳細に

 わたって検討をさせて頂いたというわけです。

 その総会の案内は、こちらになります。



 
b0111173_18053646.jpg

b0111173_18054570.jpg


 今回の総会は、私の地元開催ということもあり、二軒の住宅見学と施工を共にした水﨑建築さん

 との発表をさせていただくことになりました。

 もう一軒の住宅は、こちらも昨年に引渡ししたばかりの " 浜松・夢双庵 " です。

 こちらは、特別に全紙を用いて写真と解説を添えていただきました。

 参加されるには会員限定になっているようですが、紹介等があればオブザーバーで受付をされて

 いると伺っていますので、ご興味のある方はお問い合わせください。



# by mura-toku | 2019-02-15 18:12 | 建築 | Comments(0)

畳の間について考える!


 私が幼少の頃は、四畳半の茶の間が暮らしの中心にありました。

 小さな卓袱台を家族が囲み、食事をしたりテレビを観たりしながら過ごしていたものです。

 寝るときは卓袱台を片付けてから布団を敷き、家族が重なるように寝ていたことを思い出します。

 それが昨今の住宅では、フローリングの床が主流となり、畳はあっても一室もしくは部屋の隅に

 敷かれる存在になってきました。

 今回は、住まいの中で需要が少なくなっている畳の間について、少し考えてみたいと思います。



 
b0111173_14300184.jpg


 昨年竣工した " IWATA・SLOW HOUSE " のリビングですが、大きな吹抜け空間にしました。

 冬は南面に設けた大開口部から自然光を部屋の奥まで射し込むようにしつつ、夏は深い軒により

 日射を遮ることで、一年を通して快適に過ごすことが出来るようになっています。

 床は天竜杉の無垢フローリング、壁と天井は砂漆喰塗りにしていることも、仕上そのものの蓄熱

 性を働かせることで、室温を安定させてくれる要因になっています。

 このリビングを介して、1・2階の各部屋へと空間が繋がるように計画をしていますが、写真左

 奥の黄色い襖の向う側に畳の間があります。



 
b0111173_18424456.jpg


 襖を少し開けると、畳の間が広がります。

 床に畳を敷き詰めるだけで静謐な空間になるのは、何故なのでしょう。

 そこへ一歩足を踏み入れた瞬間に空気がピンと張り詰め、少し背筋が伸びる感覚になります。

 日本人であれば当然のことながら履いているスリッパを脱ぎ、そっと部屋に入るように思わずして

 しまうのは、おそらく畳の間が特別な空間であると認識しているからでしょう。

 (ちなみに、私が設計する多くの家では床が杉・松の針葉樹なのでスリッパは履きませんが・・・)



 設計をする上で、ここは特別な部屋の入口だよと、あえて示したい時に建具のデザインや色を変え
 
 たりすることがよくあります。

 この家は、全体的に素朴な民家をイメージしていたので、襖紙を日本の伝統色である唐子色にし、

 小鳥を模したデザインの可愛い引手を選択してみました。



 
b0111173_18571270.jpg


 日々の暮らしの中で、毎日見るだろうと思うところに、この引手を付けようを考えていました。

 どんなに疲れていても、見た瞬間に気が緩み、笑みを浮かべてしまう力があると思ったからです。

 決して安価なものではありませんが、手が触れたとき、精巧な作りと質感に驚くことでしょう。

 それは、今では入手不可能な真鍮製の黒漆仕上の逸品であることを付け加えておきます。



 
b0111173_10250268.jpg


 畳の間からリビングへの襖を開けて、天井の照明を灯してみたところです。

 吸放湿性と弾力性を兼ね備えた上に足触りが良い畳という素材は、日本の気候や暮らしにおいて

 適応できるもののひとつであり、またその艶と匂いは他に変えられない魅力が潜んでいます。

 正面の窓から、和紙を通して柔らかく射し込む自然光が床に反射する様は、畳表の縦糸と横糸を

 織りなすことで生まれる陰翳が空間の質をつくり出しているからにほかありません。

 かつては、蝋燭の灯りで畳や襖を反射させて夜の暮らしを営んでいたように、畳の間には床置き

 のスタンド照明が似合うのかもしれません。


 
 左側に見える襖の裏面はリビング側を同じ和紙を貼っていますが、引手は木製にしました。

 理由は普段使いが良いことと、部屋の雰囲気を考え、手に当たる感触を重視したからです。



 
b0111173_10251507.jpg



 入口の襖を閉めてみるとお分かりにように、引手が壁のスイッチと同じ高さにあります。

 これも拘りのひとつですが、同じ高さにしておけば暗がりでも引手の近くに手探りさえすれば、

 すぐに照明のスイッチが見つかるからです。

 座って使う畳の間なので、天井の高さを極力抑え、全体的に重心が低くなるよう目に見える全て

 のものに、気を配りたいと思っています。

 このさりげない縦長の引手ですが、こちらも国産の桑で作られた手触りが良いものです。

 見た目だけでなく、どんなに大きな手の大人でも手掛かりが良い優れたデザインなのです。



 畳の間は、日本人が忘れようとしている感性を刺激してくれる場だと思っています。

 い草の香りに包まれながら、和紙を通して柔らかい光に安らぎを感じさせてくれる空間。

 高機能を持つ畳だからこそ、見直してみる必要があるのではないでしょうか。




 
 

# by mura-toku | 2019-01-21 11:48 | 建築 | Comments(0)

借景を活かす!


 2019年がスタートしました。今年もよろしくお願いします。

 正月は初詣や旅に出られた方が多いかと思いますが、私は無理をせず家でのんびり過ごしました。

 おかげで頭がリフレッシュされ、仕事全開モードで毎日励んでいます。



 
b0111173_17392017.jpg


 昨年竣工した " IWATA・SLOW HOUSE " の吹抜空間です。

 前回のブログでご紹介した階段の途中から見たカットで、1階の左奥が畳の間、右奥がキッチン、

 2階の右が通路、左の障子奥が寝室になっています。 

 こうして見ると、この吹抜空間を介して各エリアが繋がっているのがよく分かります。

 今回は、2階左の障子の奥(寝室)について解説してみたいと思います。



 
b0111173_17490794.jpg


 正面左の小さな開口が、先の写真で障子が見えていたところです。

 この窓は吹抜を見下ろしたり、1階の暖気を取り入れたりするために設けています。

 正面右の大きな窓は自然の光と風を取り込み、布団干しも出来るよう計画しました。

 床に座る部屋はあまり天井を高く取らず、窓も極力下げた方がぐっと落ち着きます。

 照明は、天井と同化させることで存在感が薄くなり、空間がより広がって見えます。



 
b0111173_18020425.jpg


 さて、本題の借景についてお話ししましょう。

 この部屋にはもうひとつ、正面右手に見える小さな地窓を設けています。

 この窓は、夏の夜の就寝中に床を這うように流れてくる自然の風を導くためではありますが、

 実は隣家の緑を拝借するためのものでもありました。

 最初のプランを計画する前に念入りに敷地を調査しますが、その時に見つけたご馳走(私はいつも

 そう呼んでいます)を見逃さないように配慮しました。



 
b0111173_18120895.jpg


 寄って見てみると、こんな感じに窓から景色が広がります。

 少しでも部屋の中から緑が見えるのは、気分が良いものですね。



 設計という行為は単なる間取りを考えるものでは無く、こうした周辺環境を丹念に読み取りながら

 住まい手の要望を超える提案をし、理想のコストを熟考していくことではないかと思っています。

 家は大きさ・構造・設備・素材・省エネ・健康等々、様々な点を考慮しなければなりません。

 これら全てについて、プロである人間は住まい手に分かるよう丁寧に説明をする義務があります。

 今一度、本物の家づくりとは何なのか?考えてみる必要があるのではないでしょうか?

 

 

# by mura-toku | 2019-01-10 18:23 | 建築 | Comments(0)

 皆さんの家の階段に付いている手摺は、どのようなものでしょうか?

 木製や鉄製、あるいは樹脂製と種類は様々だと思いますが、形状はどのようになっていますか?

 健康な状態なら、普段の生活で階段を昇降する際にあまり手を添えることは無いかもしれません。

 ただ、人は誰でも年老いていくものであり、そうでなくても何らかの事情で歩けなくなったとき、

 手摺はしっかりとサポートできるものでなければ意味がありません。



 
b0111173_18010117.jpg


 先日竣工した " IWATA・SLOW HOUSE " の階段です。

 このように、階段踏板の奥が透けている場合は、手摺のデザインがとても重要になります。

 昇降の際に踏み外ししないためにも、しっかりと手が添えられて持ちながら移動できる木の手摺

 は、安心感を与えてくれるはずです。



 
b0111173_18052739.jpg


 2階から階段を見下ろしたところです。

 階下のリビングが吹き抜けになっているので、この手摺がしっかりしていなければなりません。

 そして、その手摺は思わず手を添えたくなるものであって欲しいと思っています。

 


b0111173_18085042.jpg


 手摺の先が紺色の壁よりも少し出ていることで、触ってみたくなることを考えました。

 手が触れるところは角張らず、優しく柔らかく感じるものが良いですね。

 先端部は、よく見ると丸く加工してくれているのがお分かりでしょうか。

 こんな些細なことが、日常の暮らしを支えてくれているのかもしれません。



 たかが手摺、されど手摺。

 毎日触れるところであるだけに、それは慎重にデザインをするべきだと思います。

 ただし、昇降しやすい階段の角度と各々の寸法が出来ていなければ始まりませんが・・・。
 

# by mura-toku | 2018-12-27 18:22 | 建築 | Comments(0)

 " IWATA・SLOW HOUSE " が先日完成し、建主へ引渡しを行いました。



 
b0111173_11152118.jpg

 
 本来なら、外構・植栽工事まで終えて引渡しが出来れば良かったのですが、諸般の事情により

 引越し後に行うことになりました。

 南正面、アプローチ側から見た外観です。

 自立した工事中の壁がありますが、これはアプローチ正面に立つコンクリート壁です。

 入口を示す目的と結界を表すものとして、設けています。



 
b0111173_11194203.jpg


 家の中心に位置する居間をキッチンから見たところです。

 正面に建つ柱は吹抜空間を支える重要なもので、家の芯にもなっています。

 床は天竜杉の無垢フローリング、壁と天井は漆喰塗り(階段の壁は杉板)の仕上にしました。



 
b0111173_11232753.jpg


 階段を上がった2階通路から居間を見下ろしたところです。

 室内へ自然光が射し込み、明るい吹抜空間に仕上がりました。

 ただ、夏の強い陽射しを遮ることを考えておかないと、室内がオーバーヒートしてしまいます。

 最近は、高性能の遮熱硝子で対応している事例が数多く見受けられますが、私は出来る限り家の

 形状で日射調整をするように考えています。

 冬は室内の奥深くまで日射を運び、夏は深い屋根や庇等で日射を遮るよう、設計段階で寸法を定め

 ておけば、何も高性能・高価格の硝子を採用しなくても対応は十分可能です。

 また、こうすることで家の表情が豊かになり、外壁や窓に当たる風雨も少なくなるので、結果家が

 長持ちすることにも繋がるように思います。

 家は建てた後の経年変化を見ていくことも重要です。

 建ててから、年を重ねる度に良い表情に変わっていく姿を見られる方が望ましいでしょう。

 人間が円熟味を増していくように、家も古美の貫禄が醸し出せるようにしていきたいものです。



# by mura-toku | 2018-12-14 11:40 | 建築 | Comments(0)