静岡県浜松市にある村松篤設計事務所の所長のブログです


by mura-toku
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 " IWATA・SLOW HOUSE " が先日完成し、建主へ引渡しを行いました。



 
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 本来なら、外構・植栽工事まで終えて引渡しが出来れば良かったのですが、諸般の事情により

 引越し後に行うことになりました。

 南正面、アプローチ側から見た外観です。

 自立した工事中の壁がありますが、これはアプローチ正面に立つコンクリート壁です。

 入口を示す目的と結界を表すものとして、設けています。



 
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 家の中心に位置する居間をキッチンから見たところです。

 正面に建つ柱は吹抜空間を支える重要なもので、家の芯にもなっています。

 床は天竜杉の無垢フローリング、壁と天井は漆喰塗り(階段の壁は杉板)の仕上にしました。



 
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 階段を上がった2階通路から居間を見下ろしたところです。

 室内へ自然光が射し込み、明るい吹抜空間に仕上がりました。

 ただ、夏の強い陽射しを遮ることを考えておかないと、室内がオーバーヒートしてしまいます。

 最近は、高性能の遮熱硝子で対応している事例が数多く見受けられますが、私は出来る限り家の

 形状で日射調整をするように考えています。

 冬は室内の奥深くまで日射を運び、夏は深い屋根や庇等で日射を遮るよう、設計段階で寸法を定め

 ておけば、何も高性能・高価格の硝子を採用しなくても対応は十分可能です。

 また、こうすることで家の表情が豊かになり、外壁や窓に当たる風雨も少なくなるので、結果家が

 長持ちすることにも繋がるように思います。

 家は建てた後の経年変化を見ていくことも重要です。

 建ててから、年を重ねる度に良い表情に変わっていく姿を見られる方が望ましいでしょう。

 人間が円熟味を増していくように、家も古美の貫禄が醸し出せるようにしていきたいものです。



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# by mura-toku | 2018-12-14 11:40 | 建築 | Comments(0)

 " IWATA・SLOW HOUSE " の現場が、最終仕上げ段階に入っています。

 外部足場が外れ、屋内の左官工事がほぼ完了したため、屋内外の工事が同時に進行していました。



 
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 敷地の東側から眺めた遠景です。

 一目瞭然なのは、他の家に比べて高さが低く抑えられていることです。

 こうすることで家のプロポーションが良くなり、周辺に対して威圧感を与えないことになります。

 また家のボリュームが小さくなるので、その分外壁面積が少なくなりコストダウンにも繋がります。

 もっと大事なことは、写真を見てもお分かりのように、南側に新居が建っても北側の家(右の家)

 に冬でも太陽の光が十分に届くことになり、お隣さんとの関係が良好に保たれることになる訳です。



 
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 昨今の住宅では、建具屋さんが襖や障子を工場でつくって現場に吊り込む(枠の形状や大きさに

 合わせて隙間なく嵌め込むこと)ことが、本当に少なくなりました。

 工事期間の短縮と省力化が重視され、建具と木枠がセットになった大手メーカー製造の既製品を

 導入する現場が大半という時代にまでなってしまいました。

 それにより職人の腕は低下し、結果、後継者が育たない問題になってきています。

 何より、設計者が何も考えず、メーカーのデザインをただ受け入れることも大問題です。

 毎日そこで暮らしながら、季節の変化に伴い木が動く(無垢の木は建てた後も呼吸するため収縮

 がおきます)ことや、木の建具に触れた時の暖かさや柔らかさを感じることが、子供たちの将来

 にとって大事な情操教育を養う場であることを問いたいと思います。



 
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 階段を上がり、2階からリビングの吹抜を眺めたところです。

 家を支える無垢の木の柱と梁、思わず触りたくなる曲面加工の手摺、穴から覗きながら鬼ごっこ

 を楽しむことが出来る紺色の手摺壁等々、これが暮らしをデザインするということです。

 ただ、既製品を寄せ集めただけでは、決して豊かな空間は生まれません。

 写真では分かりにくいのですが、この吹抜はかなり高さを抑えています。

 一番の理由は、吹抜の広さに合わせて天井の高さを計算し、適度なボリュームに調整することで

 上下階が一体になるように考えているからです。(その方が家族の距離も縮まりますからね)

 それには仕上材の選択も重要で、壁と天井を漆喰にして明るい空間になれば、天井の高さは

 さほど気にならないものです。

 これらのことは体感しなければ理解できないことなのですが、狭い広い・高い低い・明るい暗い

 といった空間にメリハリをつけることが家を豊かにしてくれることを、付け加えておきます。




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# by mura-toku | 2018-11-26 18:38 | 建築 | Comments(0)

山口蓬春記念館を訪ねる


 
 小雨降る肌寒い天候の中、念願の山口蓬春記念館(旧山口蓬春邸)を訪ねました。

 その理由は、日本画家・山口蓬春の仕事場を見てみたいということではなく、建築家・吉田

 五十八の設計による数寄屋建築の仕事を、体感したいと思い続けていたからです。

 といっても、これまでに吉田五十八の自邸(湘南・二宮)をはじめ、猪俣邸(東京・成城)や

 北村邸(京都)等の住宅、リーガロイヤルホテル(大阪・中之島)や大和文華館(奈良)等の

 施設建築に足を運んできたわけですが、なぜか旧山口蓬春邸だけは特別な想いがありました。

 それは、先に紹介した自邸や北村邸を見学した際に思ったことなのですが、更地に建てる新築

 ではなく、既存の住宅に増改築等を施した時の方が、空地面積や予算等の制約により難易度が

 上がり、それによって生まれる設計の密度の高さを感じ得たからです。

 山口氏がライカのカメラ一式を売却して購入した住宅(当時はある会社の保養施設)は、戦後

 間もない1948年(昭和23年)のことでした。

 そこには画室が無かったため、山口氏はしばらく2階の座敷で制作に励んでいたようです。

 そんな山口氏を旧友である吉田氏は設計でサポートしようと、その住宅を購入した時から構想

 していたアイデアを練りながら、丹念に図面に仕上げていきました。

 こうして1953年(昭和28年)の年末に、珠玉の画室・書庫が誕生しました。

 

 
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 その増築した画室と書庫を庭から眺めたところです。

 線の細い吉田流の数寄屋デザインが、手摺や窓の桟に見られます。

 ちなみに今回は、私が所属している(公社)日本建築家協会主催の建築ウォッチングに参加して

 実現したわけですが、今から8年ほど前に訪れた東山旧岸邸(静岡・御殿場)も同企画に参加し、

 吉田氏の設計に食い入るように見ていたのを思い出しました。

 



 
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 気持ちが昂るのを抑えきれないほど興奮した状態で、憧れの画室に入りました。

 中央右寄りに開いているところが、廊下から入る画室の入口です。

 正面に設えられているソファの後ろは、全開出来る大きな硝子戸越しに北庭が広がっていました。

 


 
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 そのソファに座って、正面に見える景色に圧倒されました。

 床から天井までが完全に外界と一体になっていて、まるで日本画のようです。

 内と外を巧みに繋げる日本建築の醍醐味を堪能し、しばらく震えが止まりませんでした。

 当然のことながら、その開口には建具が仕込まれていて、その全てが壁に引き込まれていました。



 
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 正面の開口に硝子戸が閉められました。

 よく見ないと分かりませんが、正面には3枚の大きな硝子戸が自立しています。

 その建具の細い横桟が2本あるのですが、下の桟は屋外の最上段手摺と高さを揃えていました。

 些細なことかもしれませんが、少しでも余分な線は消したいと願う建築家の拘りが見られます。

 左手の白い壁は全面収納になっていて、絵の仕事に必要なものが仕舞われていました。



 
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 おや?と思われるかもしれませんが、画室と南側の縁との間に障子が仕込まれていました。

 しかもこの障子、床から天井までの建具なのに、上の部分だけ欄間のように開閉できる仕掛けが

 あり、1枚の中で引違いすることで最大半分の大きさまで自然光を取り込むことが出来るのです。

 つまり、ここで絵を描く際に、光のコントロールをするためのディテールだったわけです。



 
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 画室のコーナーから全景を眺めてみました。

 資料によると、床は本桜の寄木張り、壁と天井は聚楽塗、枠材や建具材は赤杉の仕上です。

 最上級の材を知り尽くした上で、匠の技術により見事な空間に仕上げています。

 天井に埋め込まれた照明は製作によるもので、シェードの桟は金属製で細く見せていました。


 
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 縁の南に建て込んである木製建具(硝子戸)です。

 赤杉の糸柾(国産材の中では最上級)なので、木目が詰んでいて縦の線が真っ直ぐ伸びています。

 だから、狂いが無くて華奢な建具が出来るのかと、少し羨ましく思えた瞬間でした。

 この建具、縦の框も細いけど、横はもっと細く、しかも断面が五角形で先端がとがっていました。

 横の線は消したいという拘りがここにも見られ、何だか当時の様子を垣間見たように感じました。



 この華奢な建具を見て、以前宿泊した京都ウェスティンホテルにある佳水園(設計:村野藤吾)

 を思い出し、当時の建築家と職人が火花を散らしながら仕事に集中していただろうと感じさせる

 熱気を想像させました。

 そして、建築家のデザインを引き出すためには、良材が必要だということを改めて感じたのでした。



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# by mura-toku | 2018-11-22 18:23 | イベント | Comments(0)

 " IWATA・SLOW HOUSE " の外部足場が外れました。




 
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 南側から見た全景です。

 1階と2階の間に中間階を設けるスキップフロアーの構成を持つ家で、それが外観からも分かる

 ように向かって右側の中間階の部分を赤茶色の外壁(金属板)にしてみました。

 その他の外壁は、ベージュ色の漆喰塗りと茶色の杉板張りで仕上げています。

 外観で凹凸を設けている理由は、太陽光のコントロール(夏の陽射しを遮り、冬の陽射しを導く)

 をすることと、雨を防ぐ(小雨時には窓を開けることができ、暴風雨時は窓だけでなく外壁でも

 ガードする)こと、外壁の消耗を極力遅らせることにあります。

 中でも、杉板は最も消耗が激しいため、一番奥に張って少しでも風雨に当てないよう考えました。




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 1階のリビング北側には、雨に濡れないインナースペースを設けています。

 奥のコンクリート土間には木のスノコが貼られるので、室内から直接デッキへ出らる仕掛けです。

 通りを歩く人たちの視線を気にすることなく、開放的な気分が味わえることが出来るでしょう。

 左手の出入口はキッチンへと繋がっているため、バーベキューも楽しめるかもしれません。



 
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 リビングからの階段を上がったところです。

 正面に見える濃紺色の手摺の向こう側が、リビング上部に広がる明るい吹抜空間。

 右手奥の部屋は畳の寝室で、小窓は吹抜正面の窓の開閉と換気のために設けてみました。

 天井に見える梁は、後で紹介するロフトの床を支える重要な骨組みとなっています。



 
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 2階通路と連続しているのが、子供室です。

 床は天竜杉の無垢フローリング、壁・天井は安価なラワン合板を用い、簡素でありながら質感が

 味わえる空間になるよう、木質の内装でまとめてみました。

 正面の梯子は軽量の既製品で、右手上部のロフトに掛ければ容易にアクセスが可能となっています。



 
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 その子供室から見下ろせるのが、もうひとつの吹抜空間です。

 階下にはダイニングテーブルが置かれ、右手の窓からは木々の緑越しに朝陽が射し込みます。

 左手正面には家族専用のデスクコーナーがあり、収納量たっぷりの書棚を設けました。

 1階から、お母さんの「ご飯ですよ~」と呼ぶ声に子供たちが反応できる姿が目に浮かびます。



 
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 2階上部には家の間口いっぱいまで、収納目的のロフトを設置しました。

 床面積にカウントされない天井高さとし、採光と換気のための窓を設けています。

 家の屋根を支える木組みを見せているのは、子供たちに建築への興味を抱いてもらいたいから。

 地元にはこんな素敵な木があって、それを大工さんが丁寧に造っているのを体感するだけで、

 自然と身にしみていったらいいな、なんて思っています。



 これから様々な職方が現場へ入り、急ピッチで仕上工事が進んでいきます。

 そんな様子を今後も紹介していきますので、よろしければご覧いただきたいと思います。

 

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# by mura-toku | 2018-11-20 17:13 | 建築 | Comments(0)

 静岡県磐田市内で工事中だった ❝ IWATA・SLOW HOUSE ❞ が最終仕上げに入りました。


 
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 外部足場が架かっているため全体像が見えにくいのですが、この家は1階と2階の間に中間階を

 挟むスキップフロアーという構成になっています。

 向かって右側の赤茶色の外壁の部分が中間階で、洗面・浴室・屋外バルコニーを配しました。

 暮らしの中で洗面・浴室をどこに配置しようか悩んだ末、上下階からアクセスしやすく、かつ

 洗濯物や布団が沢山干せるバルコニーを接続すれば便利だろうという結論に至ったわけです。

 もっとも、北東方向に視線が通ることが分かっていたので、気持ち良い空間になりました。



 
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 ここが、中2階に設けた浴室です。

 メーカーが勧めるフルユニットバス(浴室まるごとをビルトインするもの)ではなく、浴室の

 床・腰・浴槽がセットされたハーフユニットバスを選択しました。

 洗濯物干用の乾燥機や打たせ湯等の機能は付いていませんが、木の香りに包まれながら日頃の

 疲れを癒すため、壁と天井に無垢板を貼りました。

 我が家でも同材を使用していますが、15年経過した今でも黴は発生していません。

 入浴しながら庭の植栽を眺められるように、大きな窓を低い位置に設けました。

 一方で、プライバシーを守る目的で硝子と硝子の間にはブラインドがセットされています。


 
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 家族が集い談笑するリビングの吹抜空間を見上げたところです。

 家族の気配を感じながら暮らしたい、時代の流れに惑わされずに自分たちの好みに合った暮らしを

 ゆっくり刻んでいきたいという想いを具現化してみました。

 使用した木材のほとんどは地元の天竜材で、写真に見えている木は全て無垢材を用いています。

 壁に貼った天竜杉の板は色のコントラストが激しいですが、10年以上経過すると色の濃淡が分かり

 にくくなるのを承知の上で、仕上げてみました。

 階段の手摺兼用の壁のくり抜きは子供たちが覗くためのもので、楽しい感じになりました。



 
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 階段を見下ろしたところです。

 リビングからアクセスする階段は空間に溶け込ませたいので、軽快なデザインが好まれます。

 階段のフレームはもちろん、踏板も手摺も全て無垢材で組んでつくりました。



 
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 2階からリビングの吹抜空間を見下ろしたところです。

 南側の庭に面した位置には2か所の大きな窓を設けています。

 室内は明るく開放的で快適な空間になりますが、注意しなければならない点があります。

 それは、室内の温熱環境です。

 夏はダイレクトの日射をどうやって遮るか、冬は暖めた室内の熱を逃がさないようにするかを

 予め考えなければなりません。

 方法は様々ですが、私はいつの時代でも、住宅本体すなわち設計の工夫によってコントロール

 を図るのがベストではないかと思っています。

 

 自然による災害が猛威を奮う時代に入ってきました。

 自然エネルギーを最大限利用しながら、簡素に暮らしていくことが求めれているように思います。



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# by mura-toku | 2018-11-15 11:26 | 建築 | Comments(0)