のめり込んだ仕事!
2011年 11月 02日
この業界に入って、設計という仕事に携わってから、30年以上の時が過ぎ去った。
そして、その多くの時間を〝住宅〟という仕事に費やしてきた。
最初に就職した会社が住宅専門であったことと、個人的に住宅は面白いと感じた
ことが、その理由ではないだろうか。
誰もが毎日暮らす住まいは、一番身近な存在であるのだが、これを一から真剣に
考えていくとなると、これほど手強いものはない。
住宅の名人と言われた建築家の吉村順三氏は、「住宅がちゃんとできれば、他の
建築はさほど難しいものではない」 と名言を残している。
住宅の設計は奥が深く、た易いものではないことを意味しているこの言葉は、今も
脳裏に焼きついていて、頭から離れない。
そんなことを学んでいた20代の頃に、ひとつの大きなハードルが立ちはだかった。
寝食を忘れるくらい夢中になり、のめり込んだ仕事が 『現代民家・宇』 である。
地元浜松の工務店が、総力を注ぎ込んで総合住宅展示場に建てたモデルハウスだ。
大手ハウスメーカーが2年ほどで建て替える中、このモデルは日本で一番長寿命の
記録を塗り替えた。
何の特徴もない工務店が生き延びるには、数多くの来場者を呼び込むことはいうまで
もないが、家に帰ってからも印象に残る建築にしなければならない。
人気を集めている日本中の住宅展示場を見て分かったことは、何といっても外観に
特徴があることだ。
どんなにインテリアが素敵でも、外観で目を引かなければ、中に入ってもらえない。
ただし、その時代の流行を追っているだけでは、寿命は短くなってしまう。
このとき、あらためて地域を見据えることの大切さに気付かされたように思う。
このひとつの仕事に、1年もの時間を与えてくれた当時の諸先輩に、心から感謝の
念を抱かずには入られない。
自分で言うのも照れくさいのだが、この写真を見るたびに泣きそうな気持ちになる。
一人のわがままに最後まで付き合ってくれた職人たちの顔が、今でも浮かんでくる。
「この網代天井は、1日で1枚しか張れなかった」 と言われた水﨑さんは、このころ
から互いに仕事を高めあう仲間になった。
家づくりは、建主と施工者と設計者による共同作業である。
3者が対等の立場でひとつの仕事に打ち込むことが出来たとき、はじめて琴線に
触れるものになりうるのではないだろうか。
by mura-toku
| 2011-11-02 19:06
| 建築